トップオピニオン社説施政方針演説 自主防衛力強化を進めよ 【社説】

施政方針演説 自主防衛力強化を進めよ 【社説】

通常国会が開幕し、石破茂首相が就任後初の施政方針演説を行った。首相は目指す国家像として「楽しい日本」を挙げ、「多様な価値観を持つ一人一人が自己実現を図っていける。そうした活力ある国家」と説明した。国家の活力を高めることは大切だが「多様な価値観」という言葉は気掛かりだ。

「令和の列島改造」を強調

2023年の通常国会ではLGBT理解増進法が成立した。「性の多様性」への理解を広げることが狙いだが、こうした価値観は社会に大きな混乱をもたらす恐れがある。この法律の制定によって自民党は岩盤保守層の支持を失い、昨年10月の衆院選での与党過半数割れにも影響した。首相には日本の伝統を重視する姿勢を示してほしい。

首相は「令和の日本列島改造」を強力に進めると強調。「政府関係機関の地方移転を推進する」と語った。だが首相が例示した防災庁は、2026年度中に設置するとしているものだ。これでは本気度に疑問符が付く。

政府機関の地方移転を進め、東京一極集中を是正することは少子化や災害への対策としても喫緊の課題だ。すぐに移転に取り組める機関もあるのではないか。また演説で示された関連施策は既に実施されているものも多く、新味に欠けていると言わざるを得ない。

一方、安全保障では「わが国への侵攻に自らが主たる責任を持って阻止・排除する能力を保有」するため、防衛力の抜本的強化を着実に進めると述べた。トランプ米大統領は同盟国に防衛費の大幅な増額を求めることが予想されている。米国の負担軽減のため、同盟国の自主防衛力を高める狙いがあろう。首相は反撃能力の保有はもちろん、自衛官の処遇改善など人的基盤の強化も実現し、防衛力向上に全力を挙げなければならない。

とはいえ、日米同盟の強化は極めて重要だ。首相とトランプ氏との直接会談はまだ行われていない。できる限り早く実施して「自由で開かれたインド太平洋」実現への協力などを進める必要がある。

中国との関係では「戦略的互恵関係」「建設的かつ安定的な関係」に言及した。しかし中国海警船が沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返し、日本の主権を侵害している状況で、こうした関係を築けるのか。

中国は昨年9月に広東省深●市で起きた日本人男児殺害事件について、日本側に詳細な説明をしていない。東京電力福島第1原発の処理水放出後に続けてきた日本産水産物の禁輸措置も撤回せず、反スパイ法で拘束された日本人の解放にも応じようとしない。これでは「互恵関係」など到底望めない。

改憲発議に向け熟議を

憲法改正については「憲法のあるべき姿について、国民に案を示すのは国会議員の責務」として、発議の実現に向けて衆参両院の憲法審査会で建設的な議論を行うよう期待するとした。

日本の平和と安全を守る上で改憲は待ったなしの課題だ。少数与党であっても、首相は改憲の必要性を訴え続ける必要がある。与野党は「憲法のあるべき姿」を熟議してほしい。

●=土へんに川

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