トップオピニオン社説訪日客最多 分散誘致で地方創生図れ【社説】

訪日客最多 分散誘致で地方創生図れ【社説】

2024年の訪日外国人数が過去最多を更新し、その消費額も初めて8兆円を上回った。わが国が観光立国としての位置を確保するには、訪日客の地方への誘致が不可欠だ。それが地方創生の鍵ともなる。

国別では韓国がトップ

日本政府観光局の発表によると、24年の訪日客は前年比47・1%増の3686万9900人で、コロナ禍前の19年の約3188万人を上回り過去最多を更新した。国・地域別では韓国が881万人でトップ。次いで中国が698万人で、台湾、米国が続いている。東アジアが中心だが、欧米など幅広い国々で増えている。

訪日客の消費額も前年比53・4%増の8兆1395億円で、過去最高だった23年の5兆3065億円を大きく上回った。費目別では宿泊費が3割強と最も多く、買い物代が続く。

円安が追い風となっていることは明らかだが、食や文化、自然など日本観光の魅力がその基礎にあり、海外への発信が徐々に奏功していることも大きい。

政府は30年に訪日客6000万人、消費額15兆円を目標に掲げている。その実現可能性が見えてきたことは確かだ。しかし目標達成には、オーバーツーリズム(観光公害)、東京、大阪、京都を巡るゴールデンルートから地方への誘致などの課題をクリアする必要がある。

訪日客の宿泊は昨年10月時点で、東京、名古屋、大阪の三大都市圏で68%を占めた。訪日客の地方への誘致は、地方創生の切り札となる可能性を持つ。

政府は北陸や東北海道など全国14地域を複数年、集中支援するモデル地域に選定。北陸エリアや松本・高山エリアなどその効果は徐々に出てきている。長期滞在する欧米からの旅行者や富裕層を念頭に受け入れ態勢を整える必要がある。

一番の課題はそれら富裕層を対象にした高級ホテルが地方ではまだ少ないことだ。中東からの富裕層などはホテルにこだわる傾向がある。そういった人々の要望に応える宿泊施設を地方の拠点都市に建設・誘致することが重要になってくる。

インバウンド消費をさらに高めるには、かつての中国人観光客の爆買いに代表されるモノ消費から体験を含めたコト消費への転換が鍵となる。自然を満喫したり、伝統工芸の一端を体験したりするなど、その地方ならではのツアーが組まれることを期待したい。また赤字ローカル線も重要な観光資源として生かせば、経営改善、路線の存続にもつながる。

中東などイスラム圏からのインバウンドも増えている。イスラム圏の人々は豚肉を食べないなど食事に関する禁忌がある。今後さらに増えることを念頭に、ハラル食品を提供するための講習会などを行い、受け入れ準備を進める必要がある。

地方の観光教育充実を

地方では人手不足のために、インバウンド需要に対してサービスが追い付かないという現象も起きている。今後の成長を考えると、観光を専門的に学ぶ地方の大学や高校がもっとあっていい。観光業は世界と繋がることができ、夢のある仕事だ。若い人たちの関心を高めたい。

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