トップオピニオン社説パレスチナ停戦 恒久和平への足掛かりに 【社説】

パレスチナ停戦 恒久和平への足掛かりに 【社説】

イスラエルとパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスがようやく停戦に漕(こ)ぎ着けた。第1段階は6週間しかなく、その間に次の交渉へとつなげられるかどうか。現地の情勢は不安定で依然、予断を許さない。

トランプ氏からの圧力も

停戦を受けてハマスは人質33人を解放する。紛争の恒久停止への一歩は、ハマスの人質の完全解放だ。そのためには今後も軍事圧力と共に粘り強い交渉が必要だ。

ハマスのイスラエル急襲から1年3カ月がたち、ガザ地区住民230万人の大部分が家や家族を失うなどの影響を受けた。死者は4万7000人に達する。住民の50人に1人が死亡した計算だ。その中には女性や子供ら非戦闘員も多く含まれる。

ハマスの戦闘能力は大部分が削(そ)がれたものの、「イスラエルの破壊」のための再武装を許さないためには、継続して監視することが必要だろう。ハマスでも「イスラエル破壊」からの転換がなされなければ共存は不可能だ。それにはイランとの関係を断ち切ることだ。ハマスがイスラエルへの攻撃を続けられたのはイランからの支援があったからに他ならない。

イランはイスラエルによる攻撃を受け、自信を喪失。レバノンのイラン系イスラム教シーア派組織ヒズボラも指導者を失い、弱体化が著しい。イスラエルの北、シリアではイランの保護を受けたアサド政権が崩壊し、地中海へと抜ける「シーア派の弧」は寸断された。今こそパレスチナ安定の好機とすべきだ。

米国ではトランプ政権が発足した。トランプ大統領は第1次政権時からイラン、ハマスへの強硬姿勢を示してきた。今回の停戦実現には、トランプ氏からの圧力もあったことが、ハマスの交渉担当者によって明らかになっている。

トランプ氏は第1次政権時にパレスチナ和平に意欲的に取り組んだが、国際社会からの協力が得られず失敗した。極端なイスラエル寄りの姿勢がその一因だ。1994年のパレスチナ自治政府発足以来の悲願である「2国家共存」の実現は米国の協力がなければ不可能であり、今後も難しいかじ取りが求められることは間違いない。

バイデン前米政権のブリンケン国務長官は「イスラエルはパレスチナ人との関係を決めなければならない。それは、パレスチナ人が国民的権利を持たない非国民であることを認めるという幻想であってはならない」とイスラエルのネタニヤフ政権に注文を付けた。その上で、イスラエルの右派勢力が目指すとされる「パレスチナ併合」を「幻想」と切って捨てた。

安定に総力を挙げよ

米コラムニスト、デービッド・イグナチウス氏はこの点について「次期トランプ政権のメンバーがブリンケン氏の警告に耳を傾けてくれることを祈る」と2国家共存への取り組みに期待を表明している。

停戦を戦闘が続くパレスチナに安定と平和を取り戻す足掛かりとすることができるか。

当事者であるイスラエルとハマス、仲介に当たる米国、アラブ諸国が総力を挙げて取り組むべき時だ。

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