トップオピニオン社説トランプ政権発足 日本の自主防衛整える機会に 【社説】

トランプ政権発足 日本の自主防衛整える機会に 【社説】

米国でトランプ新政権が発足する。

就任前からトランプ大統領は、デンマークの自治領グリーンランドの領有やパナマ運河の返還を要求しているほか、高関税政策の実施などを表明して世界に衝撃を与え、各国は右往左往している。

中国包囲網形成を目指す

刺激的な発言を重ね注目を集める手法は、トランプ氏が初めて大統領選挙に出馬した当時からの定番である。自らの存在を誇示するとともに、発言に対する世論や各国の反応を探ることに狙いがある。その点をわきまえ、発言の一つ一つに過敏に反応するのではなく、トランプ外交の特徴や発言の奥に潜む本音や意図を正しく読み取ることが肝要だ。

トランプ氏の外交手法は取引(ディール)の重視であり、本来は別個の案件も一括パッケージ化され、全てが交渉の場での取引材料に利用される。トランプ氏にとって、関税政策と安全保障政策は表裏一体の関係だと言えよう。交渉では、政治と経済の分離という旧来の手法は通じない。

トランプ新政権は「力による平和」を掲げており、権威主義勢力、中でもイランや中国の脅威への対処を最も重視すると思われる。グリーンランドやパナマに関する一連の発言も、北極海や中南米への進出を強める中国を牽制(けんせい)したものであろう。

また、日本など同盟国に防衛力強化や防衛費の大幅な増額を求めてくることが予想される。だが対中抑止に重点を置く新政権の方針は、日本の国益と合致するものである。

それ故、消極的な受け身の姿勢で対処するのではなく、日本の防衛力を強化し自主防衛体制を整える良い機会と捉え、積極的に日米連携を進めていく必要がある。米国が対中抑止力を強化する上で日本の協力が不可欠なことをトランプ氏に理解させることも重要だ。そうした取り組みが新政権との信頼関係構築や日米同盟の深化に資することになる。

それに関し、石破政権の外交姿勢が気に掛かる。米新政権が発足する前に相次いで外相や自民党幹部を中国に送り込むなど対中接近を強めているからだ。だがそれは、トランプ新政権が目指す中国包囲網形成をかわすため習近平政権が進める“微笑外交”の術中に取り込まれているだけではないのか。不当逮捕された日本人の解放や日本産水産物の禁輸撤廃などの成果も伴っていない。

首相は絆を太くせよ

中国との関係改善を重視した岸田前政権の政策をそのまま継承しているとすれば、石破茂首相の外交に対する識見が問われよう。安易で、しかも米新政権発足前の抜け駆けのような対中接近は、中国の脅威を抑え込もうとしているトランプ氏の方針と相違するばかりか、米国の心証を悪くするものだ。

その上、石破首相は未(いま)だにトランプ氏との直接会談を行っておらず、互いの信頼関係も生まれていない。石破政権が今、為(な)すべきは中国との距離を近づけることではなく、一刻も早く米新政権との絆を太くすることである。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »