トップオピニオン社説韓国大統領拘束 法律で包んだ権力闘争やめよ 【社説】

韓国大統領拘束 法律で包んだ権力闘争やめよ 【社説】

韓国の尹錫悦大統領が「内乱を首謀した疑い」で警察などでつくる合同捜査本部によって拘束された。捜査本部はソウル西部地方裁判所に逮捕状を請求。今後、地裁が逮捕状を出すかどうかを判断する。現職大統領が拘束され、逮捕状が請求されるという同国憲政史上初のことが起こり、韓国内外にさらに大きな衝撃が走っている。

野党の強引なやり口

今回の騒動では、何としても尹氏を退陣に追い込みたい野党「共に民主党」のなりふり構わない強引なやり口が際立っていた。内乱罪に対する捜査権限のない高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)が捜査の主導権に拘(こだわ)り、拘束できないとなると合同捜査本部に尹氏拘束を依頼し、さらに拘束令状の発付権限のないソウル西部地裁に令状発付を頼み、軍事機密施設である大統領公邸に入って尹氏を拘束した。

また、弾劾を審理している憲法裁判所での弁論期日を一括で決め尹氏の防御権を損ない、これに対して国家人権委員会が憲法裁に尹氏の防御権を保障するよう求める勧告を取りまとめるのを「左派系市民」といわれる活動家が妨害した等々、枚挙にいとまがない違法すれすれの攻防が行われている。これらは共に民主党の議員が各機関に指令を出して行わせていたものだ。

しかし、問題なのは国会も捜査機関も司法も例外なく政治の論理で動き、法の解釈を捻(ね)じ曲げていることだ。実態は“法律で包装した権力闘争”である。こうした戦いで熱くなっている韓国の政界、司法、メディアに「冷静、公正な議論」を説いたところで何の役にも立たない。

だが、韓国民はこの攻防の真の目的に気付いている。李在明共に民主党代表の“司法リスク防御”のためだと。李氏は11の重大容疑で四つの裁判にかけられている。その一つ公職選挙法違反の控訴審判決が2月に迫っている。有罪が確定すれば次の大統領選への立候補が難しくなり、野党にはプランBがない。だから李氏側としては、その前に尹氏の判決を急ぎ、罷免して大統領選に持ち込みたいのだ。

ここにきて世論調査に大きな変化が起きた。これまで低調だった与党の支持率が野党を上回ったのだ。共に民主党の狙いとそれに乗っている捜査機関、司法の強引なやり方への韓国民の嫌気が反映したものとみられる。韓国では「憲法の上位法として『国民情緒法』がある」といわれる。司法といえども世論の動向を無視できず、裁判の行方を左右する可能性が出てきた。

今度こそ法律論の闘いを 

弾劾が認められれば、尹氏は罷免され、60日以内に大統領選が実施される。韓国民の間では「戒厳発令は許せないが、それでは『李在明』でいいのか」という空気が厳然としてある。次期大統領選好感度では李氏がトップを走るが、それは与党も含めて他候補がまだ挙がっていないからだ。だから“速度戦”を狙っているわけだが。

いずれにせよ、今後は裁判所が主戦場になろう。法律の専門家、尹氏の弁論を国民がどう聞くか。尹氏には誠実な姿勢が求められる。場外の雑音がその声を消さず、今度こそ法律論の闘いが展開されることを願う。

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