トップオピニオン社説新成人に贈る 高めたい情報リテラシー 【社説】

新成人に贈る 高めたい情報リテラシー 【社説】

きょうは成人の日。社会の大きな変動期にあって、新成人を取り巻く環境はバラ色の将来を描きにくいものになっている。しかし課題の多い時代こそ、若い力が問題解決の起爆剤となることを忘れないでほしい。

不安定な国内外の情勢

総務省による1月1日時点の人口推計によると、新成人の18歳(2006年生まれ)は109万人で、前年より3万人増となった。男性が56万人、女性が53万人で、これからの日本を担う若い力だ。

新型コロナウイルスのパンデミックの終息がようやく見えたと思った頃、ロシアがウクライナに侵攻。激しい戦闘が続き多大な犠牲が出る中、今度はパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスのイスラエルへの奇襲攻撃に端を発した軍事衝突が起き、これもいまだ停戦の見通しが立っていない。

日本の周辺では北朝鮮がミサイル発射を繰り返し、台湾統一を掲げる中国は台湾への威嚇を強め、中国の公船が沖縄県・尖閣諸島周辺の日本の領海を恒常的に侵犯している。

国際情勢が厳しく不透明な一方、国内に目を向ければ、政治の安定の基礎にあった与党自民党が政治資金不記載問題で揺れ、先の総選挙で大敗し少数与党に転落した。内外の不安定さは、新成人が自分たちの将来を考えた時、暗い影を落とさざるを得ないだろう。

しかし大人たちが手を拱(こまね)き、突破口が開けない問題を解決する鍵は、若い人たちの力にある。例えば少子高齢化、人口減、地方消滅の危機などに対し、政府や地方自治体はさまざまな施策を練っているが、最後は若い人たちがどう行動するかによる。

発生から1年が経過した能登半島地震の復興も、結局は若い人たちがどれだけそこで生活するかに懸かっている。これは能登に限らず日本の多くの地方に当てはまる問題だ。地方創生は、もはや古い発想では解決できないところまできている。

新成人は、テレビなどマスメディアよりSNSから情報を得ている人も少なくない。SNSは劣化したマスメディアを補完する上で有効だが、情報の信憑(しんぴょう)性を見極めることが難しく偏りも大きい。闇バイト問題で明らかになったような危険性もはらんでいる。情報リテラシーの重要性がさらに増している。

正しい情報は正しい判断の基礎となるが、判断に迷うことも少なくないはずだ。その時は信頼できる先輩や年長者と相談してほしい。豊かな経験があるだけでなく、同世代とは違う情報環境にあるからだ。そして何より、本や新聞などの掘り下げた記事や論説を参考にし、総合的な判断力を身に付けてほしい。

世界への飛翔を期待

新成人が生まれた06年は、第1回のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が日本などで開かれ、王貞治監督率いる侍ジャパンが王者に輝いた記念すべき年だ。日本らしさを発揮し、世界のトップに立てることを証明した。米大リーグの大谷翔平選手を代表に、スポーツや文化芸術、学術面で世界を舞台に活躍する日本人は増えている。日々の努力が世界への飛翔に繋(つな)がることを期待したい。

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