石川県能登地方を中心に甚大な被害を残した能登半島地震の発災から1年が経過した。日本の地方が抱える問題を集約したこの地震からの復興は、地方の未来を占うものと言える。今年を「復興元年」と位置付け、動きを加速させたい。
被災建物の解体進まず
石川県などのまとめによると、地震の死者は504人(昨年12月27日現在)で、直接死が228人、災害関連死は276人に上る。9月の豪雨被害も追い打ちをかけ、復旧・復興の歩みの遅れが指摘されているが、徐々に拍車が掛かりつつある。
地震で寸断された国道249号は昨年暮れに全面通行可能となった。1日1往復だった能登空港と東京・羽田空港の空の便も、元の1日2往復に回復した。一方、石川県内で10万棟以上に上った住宅被害のうち全半壊した建物の公費解体は今年10月の完了を目指すが、まだ4割ほどしか進んでいない。解体後の再建となるとさらに先となる。
県によると能登6市町で営業を再開した事業者は8割だが、主要産業の漁業や観光業を中心に全面的営業再開がいまだに見通せない状況だ。県内81港のうち72港で地盤隆起や施設の破損が生じ、昨年12月には62港が利用可能となったが、完全復旧には至っていない。漁獲高も地震前の約6割にとどまっている。
県は高齢化率が約3割と全国平均と比べて高く、特に奥能登は5割近い。そういう中で人口の減少がさらに進んでいる。輪島市では12月1日現在の人口が元日から約9%減り、40歳未満の減少率は約18%に上る。
石川県は「わが国は今、人口減少と東京一極集中が進んでおり、能登の復興は、近い将来、多くの地方が直面する課題の解となる可能性がある」として創造的復興を打ち出している。未来像を描き、前に進んでいくには、復興を担う若い世代の流出を防ぐ必要があり、そのためには住宅と生業の再建が急務だ。
輪島で開かれた追悼式で馳浩知事は「復興の先にある『新たな能登の未来』を築く強い決意を新たに、全力を傾注し、復興への道を切り開いていく」と述べた。若い世代を呼び込むために知恵を絞ってほしい。石破茂首相は災害から得られた教訓を生かし、「世界有数の災害大国であるわが国を世界一の防災大国にすべく力を尽くすことを固く約束する」と述べた。教訓の一つが住宅の耐震化の重要性だ。
国土強靭化に教訓生かせ
直接死の多くは倒壊家屋の下敷きになったことによる。被害の大きかった輪島市や珠洲市では耐震化率が全国平均を大幅に下回っていた。一方、耐震基準を満たした家の被害は1割程度との調査結果も出ている。地方では古い建物が多い。耐震補強工事が進むよう政府・自治体の補助の拡充が求められる。
能登半島地震では、輪島市や珠洲市で断水が長期間続き、生活用水の確保に支障を来した。井戸水などを利用したケースもあったことを参考に、災害時の地下水利用も検討すべきだ。道路寸断で集落が孤立するなど、半島の地形独特の災害時の脆弱(ぜいじゃく)性も浮き彫りになった。これら多くの教訓を国土の強靭(きょうじん)化に生かす必要がある。