トップオピニオン社説25年の日本経済 賃上げ加速で好循環実現を【社説】

25年の日本経済 賃上げ加速で好循環実現を【社説】

2025年は乙巳(きのとみ)の年で、暦の上では「変化と再生(成長)」が特徴という。日本経済に対しても、そうした特徴を実現する年にしたい。そのためには物価高の克服と物価上昇を上回る賃上げの継続、生産性向上への取り組みが欠かせない。

物価高続き消費を抑制

日本経済はこのところ、内需主導の緩やかな成長を遂げている。中国経済の不調など海外環境が良くない中で、個人消費やインバウンド(訪日外国人)消費などを柱に内需が伸びて、外需の不振をカバーしている。

20日就任のトランプ次期米大統領が表明している高関税政策により、経済への下押しリスクが懸念されているが、内需主導で引き続き成長を維持できれば、そうした不安要因もある程度は抑制できるのではないか。

もちろん、輸出企業にとっては輸出戦略や海外工場での部品調達などで厳しい対応を迫られることも十分予想されるため、当該企業には柔軟かつ賢明な対処を望むほかない。が、日本経済全体としては何より内需主導の経済を力強いものにしたい。

緩やかな成長を続けているとはいえ、力強さが見られない上に成長力が弱くなっているからである。24年春闘の平均賃上げ率(連合集計)は5・10%と33年ぶりの高水準となったにもかかわらず、実質国内総生産(GDP)は4~6月期の年率2・9%増から7~9月期は1・2%増へ、内需の柱である個人消費は0・9%増から0・7%増へと伸び率を落としている。

原因は物価高の長期化で、消費者物価は2%以上の上昇が昨年11月で32カ月続く。実質賃金は高い賃上げ率を反映して昨年6月に前年同月比1・1%増と27カ月ぶりにプラスに転換したが、7月に0・3%増に弱まり、8月以降は9、10月と再びマイナス圏に沈んでしまった。

物価高は家計の節約志向を強め、消費を抑制。昨年、家計の消費支出で前年同月比プラスだったのは、最新の10月までで4月(0・5%増)と7月(0・1%増)の2回しかなく、伸びも微々たるものである。

政府は24年度補正予算で電気・ガス代やガソリン代の補助に取り組むが、どこまで物価高を抑制できるか。物価高には円安による輸入インフレ要因もある。最近は相場に落ち着きも見られるが、日銀は為替動向を注視し、その安定に引き続き努力してもらいたい。

物価高対策以上に重要なのが、物価上昇を上回る賃上げの継続である。春闘賃上げ率は23年3・58%、24年は5・10%と高い伸びを実現した。

設備投資にも注力を

十倉雅和経団連会長は、過去2年同様の高水準の賃上げが実現すれば、「(好循環の)歯車が回り始める」と主張。中小企業や非正規雇用者にも賃上げを波及させるため、「あらゆる道具を活用し、賃上げができる環境を官民挙げてつくるべきだ」と訴える。今年も高い賃上げ率の実現で政労使の認識は一致している。有言実行を望みたい。

内需の弱さには企業の設備投資の弱さもある。人手不足対策や生産性向上へ、豊富な内部留保を活用しながら、設備投資にも力を入れてもらいたい。

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