トップオピニオン社説新年の外交・安保 日米一体の部隊運用が不可欠 【社説】

新年の外交・安保 日米一体の部隊運用が不可欠 【社説】

1月20日に発足するトランプ米新政権は「力による平和」を掲げており、米国の主要な脅威と見なす中国に対し、政治、経済、軍事の全ての面で強い態度で臨むと思われる。これまでのわが国の「政治は米国、経済は中国」という政経分離アプローチには修正が求められよう。

高まる中露朝の脅威

安全保障政策では、同盟国日本に一層の防衛力強化や防衛費増額を求めてくることは間違いない。この動きを警戒し、消極的受け身の姿勢で対応するのではなく、日本は前向きに受け止め、積極的に取り組むべきである。

冷戦後、日本の防衛費は低く抑えられ、中国や北朝鮮の軍備増強に対応してこなかった。その付けが今、回ってきているのだ。防衛力の強化や経済安保体制の整備は、高まる一方の周辺諸国の脅威に対処し、安全を確保するための不可欠の政策である。「強い日本」はわが国の国益に合致するだけでなく、米新政権が期待する姿でもある。

またトランプ次期大統領は多国間協議を嫌い、国力で勝る米国が有利となる2国間での対話に持ち込もうとする政治家だ。バイデン米政権が主導してきた日米豪印4カ国の「クアッド」や日米韓などの多国間枠組みを形骸化させぬよう、その重要性を理解させる必要がある。

さらに中国がロシアのウクライナ侵略を実質的に支援し、露朝の接近が進むなどアジアと欧州の安保が一体不可分になっている。日本は共同訓練実施や情報交換など欧州の北大西洋条約機構(NATO)諸国との戦略連携を深めていかねばならない。

防衛省は24年度末までに陸海空自衛隊を一元的に運用する統合作戦司令部を新設する。米国も在日米軍再編の動きを進めている。現在、在日米軍の作戦指揮はハワイのインド太平洋軍司令部が担っているが、時差などの問題が生じている。そこで在日米軍に統合軍司令部を創設して司令部機能を付与し、統合が進む自衛隊との連携の強化を図ろうとしているのだ。

中国は台湾への武力侵攻の機会を窺(うかが)っている。台湾有事は日本有事である。露朝がそれに連動して朝鮮半島や北方など日本周辺で同時多発的に挑発に出る恐れもある。これに対処するには、日米一体の部隊運用が不可欠だ。統合した自衛隊と米軍との協力の在り方や役割分担などを早急に明確化させる必要がある。日米同盟の強靭(きょうじん)化が米国の利益にも通じることをトランプ氏に納得させることも肝要だ。

抜本改革で自衛官確保を

もっとも日米同盟を深化させ正面装備を増やしても、部隊を動かすために必要な自衛官を確保できなければ、防衛力強化は絵に描いた餅に終わる。少子化の影響で自衛官の募集は厳しい状況が続いている。これに対処すべく石破政権は昨年、関係閣僚会議を立ち上げたが、決定された基本方針は定年延長や給与引き上げ、手当・給付金の新設など小手先の施策に留(とど)まり事態改善への効果は期待薄だ。

自衛官の確保には、任期制の廃止等抜本的な制度改革に踏み込むべきであり、ロボット、無人機、人工知能(AI)の積極導入など思い切った省力化の取り組みも急がれる。

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