トップオピニオン社説日本この1年 保守の融解と舵手の不在 【社説】

日本この1年 保守の融解と舵手の不在 【社説】

2024年の日本は元日に能登半島地震が発生し、多難な出発となった。政界では政治資金不記載問題で揺れる自民党が総選挙で敗れ、少数与党に転落。保守の魂を失った自民政権と無責任野党は日本をどこに導こうとしているのか。

復旧遅れる能登の被災地

直接死が228人に上った能登半島地震では、災害関連死が260人を超え16年の熊本地震を上回った。細長い半島の道路などインフラが甚大な被害を受け、復旧が遅れたことが一因とみられる。

能登半島地震は日本の地方が抱える問題を浮き彫りにするものとなった。被害の大きかった奥能登は、過疎が進み高齢化率は約5割と高い。地震が人口減や若者の流出に拍車を掛けている。石川県の馳浩知事は、日本の地方が抱える問題解決のモデルとなるような「創造的復興」を唱えているが、国の方には能登復興を地方の問題と結び付けて取り組む姿勢が見えない。能登復興で、防災、地方創生への政府の本気度が試されている。

自民が政治資金不記載問題で少数与党に転落したのは自業自得の感があり、国会運営のためには低姿勢となるのも止(や)むを得ないだろう。しかし、衆院憲法審査会の会長ポストを立憲民主党の枝野幸男元代表に譲る必要があるのか。

枝野会長は、周囲に「9条改正と緊急事態条項新設の議論はストップさせる」と語っているという。実際、今国会での初会合で、立民の武正公一氏は、緊急事態条項よりもテレビCMを規制する国民投票法の改正が最優先課題だと主張している。

選挙の結果、憲法改正勢力が発議に必要な3分の2(310議席)を下回り、早期の改憲は望めないとしても、自民は改憲論議をリードする責任がある。結党の柱である改憲を当面棚上げにするような姿勢は、保守の魂を売ることに他ならない。

日本の舵(かじ)取りを託された石破茂首相だが、この国をどうしようとしているのか、いまひとつ分からない。簡単に前言を翻すため、言葉に重みと信頼性が欠けている。イメージが浮かんでこないのはそのためもある。

野党に妥協して保守的政策を封印する自民、存在感を発揮したい公明党と野党。それら無責任な政党の馴(な)れ合いによって、日本の針路が決まろうとしている。マスメディアも、かつて保守派の安倍晋三元首相の政敵であった石破首相には甘いときては、日本丸は漂流するしかない。

スポーツ界で明るい材料

マスメディアは今年、その劣化がますます露(あら)わになった。「オールドメディア」などと呼ばれ始め、国民の信頼は日に日に落ちている。パワハラ疑惑などで失職した兵庫県の斎藤元彦知事が、SNSの投稿の後押しで出直し選挙で勝利、再選されたことが、それを物語っている。

一方でスポーツ選手たちの活躍には、勇気と元気をもらった。パリ五輪で日本は海外開催でいずれも過去最多の金20個、総数45個のメダルを獲得。米大リーグでは、ドジャースの大谷翔平選手が史上初のシーズン50本塁打50盗塁を達成した。若きアスリートの活躍は、未来への明るい材料を提供してくれた。

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