トップオピニオン社説海外この1年 政治の変化相次ぐ困難な世界【社説】

海外この1年 政治の変化相次ぐ困難な世界【社説】

2024年は各国で政治の変化が目立った。米国の大統領選挙はじめ英国などの総選挙、フランスやドイツでの内閣不信任、韓国での大統領弾劾採決、シリアの反政府武装勢力による政権崩壊など政権側が窮地に立つ状況が相次いだ。各国で政治の舵(かじ)取りが難しくなっている。

韓国では大統領弾劾可決

米国のバイデン民主党政権は11月の大統領選挙・上下院選挙で敗北、トランプ次期大統領が来年1月に再び政権を発足させる。7月、英国のスナク保守党政権は来年の予定だった総選挙を前倒ししたものの、歴史的大敗を喫して14年ぶりに労働党のスターマー政権に交代した。

韓国では4月の総選挙で尹錫悦大統領を支える保守与党の「国民の力」が少数与党からの挽回どころか議席を減少させる惨敗。左派野党の「共に民主党」がさらに議席を増し、「大統領弾劾」攻勢を掛けた。12月、尹氏は局面打開を試みて戒厳令発令に打って出たが、世論の激しい批判を浴び、国会は尹氏の弾劾訴追案を可決した。

フランスの議会選挙は6月末の投票で右派「国民連合」が得票率トップに立った。が、7月の決選で左派連合「新人民戦線」とマクロン大統領を支える中道連合の協力により国民連合は3位に。最多議席となった新人民戦線は12月、中道のバルニエ首相に対する不信任案を提出し可決。中道連合の重鎮バイル氏が首相に就任したが、政局は混迷している。

ドイツでも社会民主党、同盟90/緑の党、自由民主党の連立政権から、11月に自由民主党が離脱。12月、社会民主党のショルツ首相に対する信任投票が否決されて、来年2月に総選挙が行われる。

民意によって政権を選ぶ民主主義国だが、保守、リベラル問わず政権側が追い詰められるのは、それだけ世界の状況が難しいからにほかならない。

新型コロナウイルス感染拡大から4年、ロシアのウクライナ侵攻から2年となった今年は、都市封鎖や戦争の余波が続いている。物価高騰、険悪な安保環境など、経済的にも軍事的にも社会的にも政治的にも葛藤が深まり、ネット上に噴出する感情や批判は時に政情不安を誘う。

一方、民意を問えない独裁的な国家群の一角を占めたシリアでロシアが支援するアサド政権が崩壊。ロシアはウクライナ侵攻の長期化で手が回らなかった。プーチン露大統領は形ばかりの選挙で5期目に入ったが、北朝鮮から軍事支援を受けねばならず、北朝鮮の兵士はウクライナ軍を相手に戦死している。

盤石と言えぬ独裁体制

また中国も不動産バブル崩壊、若者の就職難、強引な「ゼロコロナ」政策が残した住民への精神的影響などから社会不安が増し、無差別殺傷事件が頻発した。選挙がない国での不満は、恐ろしい形となって「民意」として表れかねない。そのあっけなさはかつての東欧諸国であり、シリアのアサド政権だ。

「台湾統一」の野心を露(あら)わにする中国共産党の習近平指導部、ロシアのプーチン政権、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記らの独裁体制も盤石とは言えないかもしれない。

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