トップオピニオン社説中国の核増強 日本は「核共有」の検討も 【社説】

中国の核増強 日本は「核共有」の検討も 【社説】

米国防総省が中国の軍事・安全保障分野の動向に関する年次報告書を公表し、今年半ば時点で運用可能な核弾頭数が600発を超えたと分析した。前年から100発の増加で、中国による核の脅威は急速に増大している。日本は核抑止力向上に向け、米国の核兵器を共同運用する「ニュークリア・シェアリング(核共有)」も検討すべきだ。

予測よりペース上がる

報告書は、中国の核弾頭数が2030年までに1000発を超え、35年まで急速な拡大を続ける公算だとも予測した。開発中の大陸間弾道ミサイル(ICBM)や精密なミサイルなど、核弾頭を搭載可能な兵器の多様化も進んでいるという。

20年の報告書は保有数を200発台前半と分析し、30年までに倍増するとしていた。しかし20年から4年間で3倍になっており、予測よりも核増強のペースが上がっている。国防総省高官は「中国の核戦力は数が増えているだけでなく、質も向上している」と警告した。

中国は米露に肩を並べる「世界一流の軍隊建設」を目指しており、核増強もその一環だ。福建省では2基の高速増殖炉を建設中で、稼働すれば核爆弾の原料となるプルトニウムの保有量が大幅に増える。中国は平和利用を強調しているが、16年を最後にプルトニウム保有量を公表していない。

中国が原爆実験に初めて成功してから今年10月で60年となった。核実験は、少数民族の居住する新疆ウイグル自治区の実験場で行われてきた。少数民族に深刻な健康被害をもたらしたことは大きな問題だ。日本は中国の不透明な核増強だけでなく、核実験に伴う人権侵害も糾弾しなければならない。

一方、来年1月に就任するトランプ次期米大統領は、外交・安全保障政策の主要メンバーに対中強硬派をそろえた。トランプ前政権当時のポンペオ国務長官は演説で、中国の習近平国家主席を「全体主義の信奉者」と呼び、それまでの米国の対中関与政策を批判した。中国を相手に平和を守るには、抑止力を強化する以外にはない。

トランプ氏は同盟国の日本に自主防衛力の増強を要求するとみられている。日本はこれまでも反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や、国内総生産(GDP)比2%の防衛費確保に向けた取り組みを進めてきたが、中国の脅威増大が続いている以上、さらなる防衛努力が求められよう。中国の核増強に対しては核抑止力の向上も重要課題だ。「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」とする非核三原則の「持ち込ませず」を見直して核共有を進めなければならない。

国会は平和守る議論を

その意味で、かつて核共有に前向きな見解を示していた石破茂首相が、首相就任後に「非核三原則などとの関係から認められない」と述べたことには首を傾(かし)げる。

先の臨時国会では「政治とカネ」の問題が焦点となり、安全保障を巡る議論は低調だった。危機感が欠けていると言わざるを得ない。来年1月下旬に開幕予定の通常国会では、平和を守るため、核抑止力向上に向けた議論が必要だ。

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