臨時国会が27日間の会期を終えて閉幕した。衆院選で過半数を失った与党は、国民民主党の協力を得て2024年度補正予算を成立させた。閉幕後の記者会見で石破茂首相は「与野党が侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を行い、熟議の国会にふさわしいものになった」と評価した。しかし、国民民主との「部分連合」を維持できるかなど残された課題は多い。
企業献金は結論先送り
臨時国会では政治改革3法が成立し、使途公開が不要な政策活動費は廃止された。だが、政策立案に向けた調査のため政党から政治家個人に支出する「調査委託費」が抜け穴となっているとの指摘もある。
政活費を巡っては、自民党が当初提出した独自案で廃止を明記した上で一部支出を非公開にできる「公開方法工夫支出」の新設を打ち出した。議員外交などでは公開すると国益を損なう支出もあるためだ。野党の批判を受けて独自案を撤回したのは安易だと言わざるを得ない。
企業・団体献金の扱いは来年3月末まで結論を先送りした。首相には熟議だけでなく、結論を出すという宿題が残された。来年の通常国会の大きな争点となろうが、国民が納得する形で解決する必要がある。
一方、自民党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件を巡って行われた政治倫理審査会では、真相が分からないままで信頼回復には程遠い結果に終わった。事実究明に真摯(しんし)に協力せず、政倫審を時間の無駄としていることが、国民の政治不信を招いていることを自覚すべきだ。
臨時国会では、所得税が課される年収の最低ラインである「年収103万円の壁」の見直しも大きなテーマとなった。提起した国民民主は「178万円」までの引き上げを主張。しかし「123万円」を提示した自民税制調査会が譲歩しなかったため、公明党を含めた3党協議は決裂した。その後、3党の幹事長が協議継続で合意したが、25年度予算への国民民主の賛同を得られるかは不透明だ。
来年の夏には東京都議選、7月には参院選が行われる。来年1月下旬に開幕予定の通常国会では、各党が実績アピールのパフォーマンスに陥りやすくなろう。国民民主も「103万円の壁」問題が決着しなければ、与党との部分連合を離脱し、内閣不信任決議案への賛成に回ることもあり得る。
国民民主は「103万円の壁」問題で必要な財源を明示していない。与党との協議で主張を押し通すのは、党利党略だと受け取られても仕方がない。通常国会では与党も含め、実のある議論を行わなければならない。
与野党は改憲原案作成を
憲法改正論議は、先の衆院選で自民、公明、日本維新の会、国民民主の「改憲勢力」の議席が、国会発議に必要な310議席を下回ったこともあって低調だったと言える。ただ、覇権主義的な動きを強める中国や核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威が高まるなど日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。集団的自衛権の行使などを制約する憲法の改正は喫緊の課題だ。国家と国民を守るため、与野党は協力して改憲原案の条文作成を進めるべきだ。