トップオピニオン社説日本学術会議 国益に資する組織改革を 【社説】

日本学術会議 国益に資する組織改革を 【社説】

日本学術会議の在り方を検討する政府の有識者懇談会が、法人化に向けて組織形態や会員選考の方向性を示した報告書をまとめた。学術会議は軍事研究を行わないとする声明を発表するなど、特定のイデオロギーに基づく運営が目立った。法人化によって国益に資する組織に生まれ変わらなければならない。

会員選考に投票導入へ

「わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与する」(日本学術会議法)ために1949年1月に発足した学術会議は、内閣府の特別の機関で約10億円の年間予算が計上されている。ただ発足当初から日本共産党が浸透工作を進め、大きな影響力を持ってきた。

50年4月と67年10月には戦争や軍事目的のための科学研究は行わないとの声明を発表。2017年3月には二つの声明を継承するとともに防衛省が装備品開発を目指して研究者に資金提供する「安全保障技術研究推進制度」について「政府による介入が著しく、問題が多い」と批判する新たな声明を出した。この声明を受けて制度への応募を控える大学も出るなど、研究者を委縮させたことは否めない。

22年7月には、軍事と民生双方で活用できる「デュアルユース(両用)」の先端科学技術研究を事実上容認したが、軍事研究を認めたわけではないとしている。一方、15年9月には中国科学技術協会と協力促進を目指す覚書を締結するなど、日本にとって大きな脅威となっている中国を利するような活動をしている。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、今のままでは学術会議が日本の平和に貢献できるとは思えない。

学術会議の在り方に関する議論は、20年10月に菅義偉首相(当時)が会員候補者6人の任命を拒否したことをきっかけに浮上した。6人はいずれも人文・社会科学系で、安全保障関連法などの制定に反対してきた。

有識者懇の報告書は会員選考について、現会員による推薦制度を維持するとともに会員以外の推薦も受け付け、会員間での投票制度を導入するとしている。また、会員以外の科学者による「選考助言委員会」を設置し、選考基準などに外部意見を取り入れるという。改革を進めるには、共産党の影響力排除のためにも会員選考の透明性向上が不可欠だ。

政府は23年の通常国会に会員選考方法を見直す改正法案を提出しようとしたが、学術会議側が「独立性が損なわれる」と反発したために見送った。有識者懇は昨年12月に「政府の機関であることは不適切」とする中間報告を政府に提出。今回の報告書は、法人化後も政府の財政支援が続くことから、政府が任命する「監事」が予算執行や財務状況について監査するとした。

許されぬ身勝手な言い分

しかし、学術会議の内部にはこれにも反発する声がある。政府に支援してもらう以上、一定の監督を受けるのは当然だ。それが嫌であれば政府に頼らず、自分たちで運営資金を調達しなければならない。財政支援の原資は国民が納めた税金であり、国民無視の身勝手な言い分は許されない。

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