トップオピニオン社説エネ基本計画案 原発の「最大限活用」は妥当 【社説】

エネ基本計画案 原発の「最大限活用」は妥当 【社説】

経済産業省は次期エネルギー基本計画の原案で、2040年度の電源構成について再生可能エネルギーを4~5割程度、原発を2割程度とし、両電源を脱炭素化に向けて「最大限活用する」ことを打ち出した。

原発に関し、これまでの「可能な限り依存度を低減する」との記載を削除し、建て替えを推進する方針を盛り込んだことも妥当だ。

電力需要増大が背景に

エネルギー基本計画は電力や資源について国の中長期的な方針を示すもので、3年に1回程度改定する。次期計画は来年2月にも閣議決定され、温室効果ガス排出量を35年度に13年度比60%、40年度に同73%削減する政府目標の裏付けとなる。

原案では、データセンターや半導体工場の新増設などで、現在1兆㌔㍗時弱の発電量が40年度に1兆1000億~1兆2000億㌔㍗時に膨らむと試算。再エネを30年度目標の36~38%から引き上げる一方、火力発電などは42%から3~4割程度に減らすとしている。

電力需要が増大し、地球温暖化が進む中、エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立は急務だと言えよう。ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢緊迫化によって資源価格も高騰しており、エネルギー安全保障を強化する上でも再エネの活用拡大は理にかなっている。

ただ再エネの中でも太陽光や風力発電は、発電量が天候で左右される欠点がある。さらに、太陽光に関しては適地が減少している。これを補えるのが、現行のエネルギー基本計画で「重要なベースロード電源」と位置付けられている原発だ。コストが安く、昼夜を問わず安定的に発電できる原発の活用も脱炭素化には欠かせない。

原案は原発について、廃炉を決めた原発敷地内に限定していた建て替えを、同じ電力会社が持つ他の原発敷地内でも可能としたほか、次世代型原発の開発方針も盛り込んだ。東京電力福島第1原発事故以来の原発・エネルギー政策の大きな転換だ。しかし、23年度の発電量は全体の8・5%にすぎない。2割程度という目標の達成には、安全を大前提に再稼働を着実に進める必要がある。

原発活用には課題も多い。政府は原発の使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」の実現を目指してきたが、青森県六ケ所村に建設中の再処理工場は完成時期の延期が繰り返されている。再処理後に残る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場も決まっていない。

一方で今年は、福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)である東北電力女川原発2号機や中国電力島根原発2号機が、事故後初めて再稼働した。政府や電力会社は事故で生じた国民の不安を和らげるため、原発の安全性に関する情報発信にも一層の工夫を凝らすべきだ。

多様な電源の確保を

エネルギー源を輸入に頼る日本は、多様な電源の確保が求められる。原案は火力の二酸化炭素(CO2)排出削減のため、水素・アンモニア燃料などの活用を進めるとしている。脱炭素化に向け、火力の技術革新も急ぎたい。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »