トップオピニオン社説NTT法報告書 必要な改正行った上で存続を 【社説】

NTT法報告書 必要な改正行った上で存続を 【社説】

NTT法見直しを議論する情報通信審議会(総務相の諮問機関)の通信政策特別委員会がまとめた最終報告書は、自民党が求めたNTT法廃止について存続との両案併記にとどめ、総務省に検討を委ねるとした。NTTの公共的な役割を踏まえれば、NTT法は必要な改正を行った上で存続させることが望ましい。

全国一律義務緩和を提言

自民党は昨年12月、規制撤廃による国際競争力強化の観点からNTT法の廃止を提言。これに対してKDDIなど競合3社は、NTTグループが肥大化して公正な競争が阻害されると反発した。報告書はNTTに対する規制に関して①NTT法で引き続き規定②電気通信事業法に移行し、NTT法は廃止――の2案を提示。総務省は報告書を受けて判断し、来年の通常国会に法案を提出する。

NTT法の存廃についての議論は、NTT株を売却し、収入を防衛力強化の財源に充てる案が自民内で浮上したことで始まった。ただ、NTT法の在り方に関する自民のプロジェクトチーム(PT)の座長を務め、議論を主導した甘利明元幹事長が10月の衆院選で落選。NTTの島田明社長は現段階では廃止できないと表明した。

NTT法は「国民生活に不可欠な電話」のサービスを、全国で公平かつ安定的に提供すると定めている。NTT法が廃止され完全民営化すれば、こうしたサービスを受けられなくなる地方が出てくる恐れがある。NTT法は存続させるべきだ。

一方、このような規定がNTTの大きな負担となってきたことも確かだ。NTTが全国一律で提供しなければならないのは固定電話サービスだが、固定電話事業は設備の老朽化や加入者数の減少によって2022年度には赤字が年間300億円に達し、今後も大きく膨らむとみられている。

報告書は全国一律義務を緩和し、他に事業者がいない地域に限ってNTTが義務を負う「最終保障提供責務」に見直すよう提言した。また携帯電話の電波を用いた固定電話も、サービスに加えることを容認。見直しによって経営改善が期待できるが、電波状況次第ではつながりにくくなる携帯電話に対し、安定したインフラである固定電話の重要性を念頭に置いた経営判断も求められる。

さらに報告書は、政府によるNTT株の保有義務や事業の認可制などの規制は一部を除き維持すべきだとした。外国人株主が持つNTT株の割合を全体の3分の1未満とする外資規制も継続するよう求めている。NTTは民営化しても公共性を持つ企業であり、こうした提言は妥当だと言えよう。

革新技術で競争力強化を

NTTは次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」の研究・開発を進めている。半導体回路などで電気信号を段階的に光信号に置き換え、高速・大容量で遅延や消費電力も少ない通信の実現を目指すものだ。

人工知能(AI)の普及による通信量・電力消費の拡大を見据えた革新的な技術であり、IOWNの開発を国際競争力の強化につなげてほしい。

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