日本維新の会が臨時党大会で党代表選挙を行い、投開票の結果、大阪府知事の吉村洋文氏を新代表に選出した。他に3人の国会議員が候補者として吉村氏と競ったが、圧倒的な大差をつけられた。
国政政党でありながら国会議員の影の薄さを改めて露呈した形で、国会における存在感、および「全国政党化」に大きな課題を残した。
新代表に吉村大阪府知事
吉村氏8547票、松沢成文参院議員1066票、金村龍那衆院議員635票、空本誠喜衆院議員492票で、吉村氏が約8割を占める圧倒的な得票で新代表に選出された。だが、国会議員の候補者3人が残り2割の少ないパイを分け合う惨敗を喫したことにより、むしろ国政リーダーを誕生させにくい政党だと証明した代表選になったと言えよう。
党員ら有権者2万5871人の投票率は41・8%だった。地域政党・大阪維新の会を土台とした党内の国政への関心の低さを物語っており、盛り上がりを欠いていた。衆院選敗退を受けて行われた代表選で国会議員に対する党員の支持が低い状況では、来夏の参院選での苦戦が早くも予想される。
吉村氏は共同代表に前原誠司衆院議員、幹事長に岩谷良平衆院議員、政調会長に青柳仁士衆院議員、総務会長に阿部司衆院議員の起用を決め、同党両院議員総会で新執行部を発足させた。大阪府知事が国会議員団の代表として共同代表を選ぶのは同党独特の仕組みだが、岩谷幹事長、青柳政調会長は大阪の選挙区、前原共同代表は京都と大阪圏中心の地域性は強い。
また、代表選を戦った松沢、金村、空本の各氏は含まれず、非主流派に回った感は拭えない。松沢氏はかつて神奈川県知事を務め、金村氏は神奈川の党代表であり、空本氏は広島が選挙区だ。全国政党化を目指す上で“地域の壁”は見直す必要があろう。衆院選では前政調会長の音喜多駿氏が参院議員を辞して東京1区から出馬するも落選するなど、大阪圏以外では他野党の躍進に比べ埋没した。
打開策は代表に選出された吉村氏が国政に転身することだ。大阪市議を経て衆院議員を1年務め、大阪市長、大阪府知事と初代代表の橋下徹氏、2代目代表の松井一郎氏の後継の道を着々と進んできたが、松井氏までは国政転身を避けている。大阪の府政、市政が全国から注目され、強い発信力を持った時期は、2度の住民投票で「大阪都構想」が挫折したことで過ぎており、新たなビジョンを国政に向けて示すべきではないか。
しかし、日本維新の代表選と並行して行われた大阪維新の代表選でも、吉村氏が「大阪都構想」を一丁目一番地として強調し再選された。府知事のままでは、地方政策実現のプライオリティーが高くなるだろう。日本維新の代表としては「次世代のため」などと訴えたものの、月並みのアピールである。
“二足のわらじ”を脱げ
そろそろ地方と国政の“二足のわらじ”は脱ぐべきではないのか。このままでは旧日本維新の会が野党の離合集散に巻き込まれた二の舞いになりかねない。