Homeオピニオン社説米フィジー交渉 日本も島嶼国への関与強化を 【社説】

米フィジー交渉 日本も島嶼国への関与強化を 【社説】

米国と南太平洋のフィジー両政府は、米軍がフィジー領域内で活動しやすくするため、地位協定締結への交渉に入った。協定が成立すれば、米軍部隊の派遣や共同訓練が頻繁に行われるようになる。太平洋島嶼(とうしょ)地域で影響力を増す中国を念頭に、米国だけでなく日本も関与を強化すべきだ。

中国が南太平洋に進出

オースティン米国防長官が現職長官として初めてフィジーを訪れ、ランブカ首相らと会談。燃料や医薬品の提供、有事の際の整備施設利用などを定めた物品役務相互提供協定(ACSA)に署名したほか、フィジー軍の装備近代化のために米側が490万㌦(約7億5000万円)を支援することも表明した。米国はこの地域で昨年5月、パプアニューギニアとも防衛協力協定を締結している。

フィジーには、太平洋の18カ国・地域が加盟する地域機構「太平洋諸島フォーラム(PIF)」の事務局がある。日本も昨年度の「政府安全保障能力強化支援(OSA)」として、フィジーに小型警備艇と小型救難艇の導入費用4億円を供与した。OSAは、法の支配など価値観を共有する「同志国」の軍を対象としている。

このような動きは中国を念頭に置いたものだ。中国はこの地域で経済力を背景に影響力を拡大。2019年9月にソロモン諸島とキリバス、今年1月にはナウルが台湾と断交して中国と国交を結んだ。ソロモンは22年4月、中国と安全保障協定も締結している。

中国には台湾の孤立化を図るとともに、伊豆諸島やグアムなどを結ぶ「第2列島線」域内で制空・制海権を確保する狙いがある。台湾有事などの際に米軍を寄せ付けない戦略だ。「台湾有事は日本有事」であり、日本も中国の南太平洋進出を十分に警戒する必要がある。

また、日本にとって南太平洋は豪州から資源や食料を輸入する際の重要なシーレーン(海上交通路)だ。ソロモンは米豪を結ぶ要衝でもある。中国が存在感を高めれば、地域の安定と航行の自由が脅かされかねない。

日本は今年7月、太平洋島嶼国・地域との首脳会議「太平洋・島サミット」を開催。首脳宣言には、中国を念頭に「武力の行使または威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対する」と明記した。

さらに島嶼国の中には海面上昇で水没の危機にさらされる国もあることから、岸田文雄首相(当時)は気候変動問題を「島嶼国存続に関わる唯一最大の脅威」と位置付け、防災能力の強化、脱炭素への協力を進めると表明。準天頂衛星を通じた気象庁観測データの提供を打ち出した。日本は米豪両国との連携を深めつつ、この地域への関与を強めなければならない。

台湾との断交を招くな

台湾の頼清徳総統は今月末から、太平洋のマーシャル諸島、ツバル、パラオを歴訪する。太平洋地域で台湾と外交関係があるのはこの3カ国のみだ。

3カ国が台湾と断交し、中国に取り込まれる事態を招かないためには、台湾と民主主義の価値観を共有する日米豪の働き掛けが重要だと言えよう。

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