Homeオピニオン社説共同通信誤報 日韓修復の機会を潰す損失だ 【社説】

共同通信誤報 日韓修復の機会を潰す損失だ 【社説】

結果的にデマゴーグが日韓修復に支障を来す形になった。「佐渡島(さど)の金山」の世界文化遺産登録を受けて新潟県佐渡市で行われた朝鮮半島出身者を含む全労働者の追悼式を巡り、日本側政府代表の生稲晃子外務政務官が過去に靖国神社を参拝したとして韓国世論が反発、韓国側は代表者の参加を中止した。その後、生稲氏の参拝を報じていた共同通信社が誤報と発表したが、覆水盆に返らずの事態を招いた。

佐渡追悼式に韓国不参加

佐渡島の金山の世界遺産登録について当初、韓国側は朝鮮半島出身者が労働従事したことに強制労働であると反発していた。韓国の同意を取り付けるために日本側は毎年、朝鮮半島出身者を含む全労働者の追悼式を行うことを約束。この追悼式が24日に初めて行われた。

ところが生稲氏について、共同通信が2022年8月15日の靖国参拝に関する記事で生稲氏本人に確認もせず参拝したとの記事を配信しており、追悼式に当たって韓国で問題化。最大野党「共に民主党」が「侮辱的対日外交」と尹錫悦政権を批判し、追及する構えを見せた。

残念ながら対日関係の正常化を進めている尹大統領の支持率は、就任以来最低にまで下がっている。韓国ギャラップ社が今月初め発表した世論調査では19%だった。政権は不安定になっており反日世論再燃に敏感にならざるを得ない事情もあろう。

生稲氏「靖国参拝」報道は、誤報であっても反日感情を煽(あお)り、韓国政府は「式前に両国が受け入れ可能な合意に至るのが難しいと判断した」として、追悼式参加を取り止(や)める結果につながった。韓国側はかつて朝鮮半島出身労働者が居住していた佐渡市の「第四相愛寮」跡地で独自に追悼行事を執り行った。

一方、韓国側の追悼式参加中止の情報に、わが国でも新聞、テレビなど大手メディアで生稲氏の「靖国参拝」を問題にするかのように報じられた。共同通信社長は外務省を訪れ謝罪を行ったが、結果的に日韓分断の“時限爆弾”を仕掛けていたとみられても仕方がない。

過去には朝日新聞が従軍慰安婦報道で誤報を認め、第三者委員会で検証し報告。しかし、誤報であっても日本側が報道したことにより韓国では従軍慰安婦問題に火が付き、少女像が設置されるなど、わが国に厳しい状況を生んでいる。

また1982年には、マスコミ各社が、教科書検定で、歴史教科書にあった「侵略」を「進出」に書き換えさせたとの誤報を報じ、韓国、中国で激しい反日世論を呼び、外交問題となった。競い合うように誤報して近隣国の反日世論を誘うのは、自虐的であり売国的である。

近隣関係の火種にするな

そもそも靖国神社は戦死者をしめやかに慰霊する社だ。また、例年500万人もの参拝客が訪れる観光地でもあり、戦後累計すれば国内でも大多数の国民が訪れている。いつまでも政治家に限り靖国神社との「接点」を追い回し、近隣国との関係の火種にしようとするマスコミのあり方は改めるべきである。特に共同通信がしたような誤報は繰り返されるべきではない。

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