Homeオピニオン社説COP29 中印は大国の責任果たせ【社説】

COP29 中印は大国の責任果たせ【社説】

アゼルバイジャンの首都バクーで開かれていた国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)は途上国の温暖化対策の資金について、先進国の主導によって2035年までに「少なくとも年3000億㌦(約46兆円)」とする成果文書を採択した。

先進国と途上国の合意が辛うじて成ったが、地球温暖化対策の実施は多くの不透明さと課題を抱えている。

温暖化による被害顕著に

資金は途上国の温室効果ガス削減のほか、気候変動による災害への対策や農業被害の軽減などの取り組みに充てられる。会議の最大の議題は、25年以降の途上国支援の新たな目標設定であったが、年3000億㌦は、09年のCOP15で定められた現行目標である年1000億㌦の3倍に当たる。

議長国のアゼルバイジャンは当初、先進国が主導し35年までに年2500億㌦(約39兆円)を拠出する目標を明記した案を示したが、途上国は不十分だと反発。3000億㌦とする案でも意見はまとまらず、「少なくとも」という文言を追加することで妥協した。

支援額が3倍にも膨れ上がったのは、温暖化による被害がますます顕著になっていることが理由の一つと考えられる。北極の海氷の減少や豪雨や干ばつなど、世界各地で起きている異常気象は、温暖化が背景にあることは明らかだ。温室ガス削減や災害への備えは待ったなしの状態である。

しかし温暖化対策の議論、実践において、世界最大の温室ガス排出国であり、GDP(国内総生産)世界2位の中国や排出量3位のインドが「途上国」の立場で責任を果たそうとしないのは、どう考えても納得できない。先進国は中国などにも資金拠出に参加することを求めたが、「途上国の自発的な貢献を奨励する」という曖昧な文言にとどまった。

温暖化の責任は、主に産業革命以来、二酸化炭素(CO2)を大量に排出してきた西欧諸国にあるという歴史観が、中国やインドの姿勢の背景にあると思われる。しかし歴史にばかりこだわり、それを口実に大国の責任から逃れようという姿勢は許されない。

大きな資金援助の目標が定められたが、これを実行していくことは容易ではない。ロシアによるウクライナ侵攻が続くなどして、先進国の経済、財政事情は決して余裕のあるものではない。サイモン・スティル条約事務局長が閉会に当たり、「人命を救うために約束は守らなければならない」と念を押したのも、そのためだ。

民間資金で関心高めよ

そういう面で、先進国の資金源について公的資金だけではなく民間資金の活用を認めたのは重要な前進である。

温暖化対策は、これまで民間のボランティア団体が先頭に立って進められてきた。どれだけの資金を民間から拠出できるかは、国によってさまざまと思われるが、温暖化対策の原点を確認するという意味もある。多くの人々がより関心を高め、積極的に貢献することにもつながるはずだ。

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