Homeオピニオン社説総合経済対策 物価高対策にもっと厚みを【社説】

総合経済対策 物価高対策にもっと厚みを【社説】

政府は総合経済対策を決定した。裏付けとなる2024年度補正予算案の歳出規模は約13兆9000億円である。物価高が続き成長の重しとなっているためだが、それにしては対策の中身が貧弱で、物価高克服の本気度を疑わせる。もっと厚みが必要である。

実質賃金またマイナスに

経済対策の大きな柱である物価高対策では、来年1、2月の家庭向け電気代を1キロワット時当たり2・5円、都市ガスは1立方メートル当たり10円を助成し、3月は半額に縮小する。ガソリン補助金は減額しつつ年明け以降も継続。住民税非課税の1世帯ごとに3万円を給付し、子供1人当たり2万円を加算する。

内閣府によると、こうした物価高に伴う国民負担の軽減策に国と地方で計約3兆8000億円の支出を行う。

物価高対策が必要なのは論をまたない。7~9月期の実質国内総生産(GDP)は年率0・9%増と2期連続のプラス成長となったものの、前期より伸び率は落ちた。個人消費が実質前期比0・9%増と成長の牽引(けんいん)役となったが、認証不正問題の反動による自動車販売の回復など一過性の要因があった上での成長率である。23年、24年と春闘では大幅な賃上げを達成しながらも、力強さが見られない。物価高が成長の重しになっているからである。

しかし、政府が経済対策で「物価高の克服」と銘打つ割には、電気・ガス代の支援などは中身が貧弱と言わざるを得ない。来年1~3月の補助額は、岸田前政権の酷暑乗り切り緊急支援(8、9月の電気代4円、ガス代17・5円、10月は電気代2・5円、ガス代10円)より4割前後も少ない。

実質賃金は6月に高い賃上げとボーナスにより前年同月比1・1%増と27カ月ぶりにプラスに転換したが、8月には再びマイナスに戻り、電気代・ガス代補助が再開となった9月(8月使用分)でも0・1%減とプラスに浮上できないでいる。

冬の暖房需要から電気・ガス代の増加が見込まれる来年1~3月に、政府が予定する補助額でどれだけ物価高が抑えられ、消費回復につながる実質賃金のプラス転換が期待できるのか。「物価高の克服」への本気度が疑われるとした所以(ゆえん)である。

物価高対策の厚みへ、補正予算案での歳出増が難しいのなら、25年度予算案での対応が可能とみられる半導体・AI(人工知能)支援補助金などから回すことも検討してはどうか。

次期米政権の財政拡張的な政策で円安が進み、輸入物価上昇から物価高を招く可能性もある。政府・日銀には為替動向を注視し機敏な対処を望みたい。

早期に「手取り増」実現へ

経済対策で「年収103万円の壁」見直しへ、25年度税制改正で議論し引き上げる方針を明記したことは評価できる。引き上げ幅やその方法、引き上げに伴う国や地方の税収減、実施時期の問題など検討すべき点は少なくないが、消費増につながる「手取りを増やす」政策の早期実現に知恵を絞ってほしい。

企業に賃上げや投資を促す措置は、来年度予算案や税制改正で対応するのは当然である。

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