トップオピニオン社説G20サミット 西側各国は結束を強めよ【社説】

G20サミット 西側各国は結束を強めよ【社説】

20カ国・地域首脳会議(G20サミット)がブラジルのリオデジャネイロで開かれた。ウクライナや中東情勢が緊迫化する一方、「米国第一主義」を掲げるトランプ次期米大統領の返り咲きが決まる中での会合となった。議長国ブラジルが主要テーマに掲げた飢餓、貧困、格差との闘いや気候変動、国連安全保障理事会の改革など幅広い分野について各国首脳らが議論を重ねた。

習氏がトランプ氏を牽制

首脳宣言では気候変動対策の重要性を強調し、貧困・飢餓対策では国際枠組み「グローバルアライアンス」(世界同盟)創設を表明。ウクライナ情勢では人的被害やエネルギー安全保障などへの悪影響を強調したがロシアを名指ししなかった。中東情勢では人道状況の悪化に深い懸念を表明し、「包括的な停戦」を呼び掛けたが、イスラエル批判は避けた。国際貿易では多角的貿易体制の必要性には触れたが、保護主義反対は明記されないなど曖昧な表現が目立った。

新興・途上国「グローバルサウス」の筆頭格として存在感を示したいブラジルのルラ大統領が決裂を恐れ、各国の合意が得やすい内容にとどめた結果と言える。一方で「多国間主義への強いコミットメント」や気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」の目標達成のため「結束し続けることへの決意」を再確認する文言が盛り込まれた。

バイデン米大統領はウクライナ支援継続に向けた結束を各国に呼び掛けたが、レームダック(死に体)化したバイデン氏への各国首脳の反応は総じて冷ややかだった。また集合写真の撮影に遅れるという失態を演じ、存在感を弱めたバイデン氏と対照的だったのが、撮影の際に最前列中央の位置を占めた中国の習近平国家主席だった。

習氏は「中国はグローバルサウスの一員で、途上国が頼りにできる長期協力のパートナーだ」と強調し、巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて途上国への援助を拡充すると約束した。また貧富の格差がない世界実現のためには多国間主義を堅持し、単独行動主義は避けるべきとの考えを示し、保護主義的政策を掲げるトランプ氏を牽制(けんせい)した。

トランプ氏復帰に伴う各国の動揺に乗じ、中国への支持取り付けと影響力拡大を狙う意図が読み取れる。今回のサミットで存在感を増したのは習氏で、陰の主役はトランプ氏だった。覇権主義的な動きを強める中国に翻弄(ほんろう)されぬよう、西側各国は連携し結束を強めねばなるまい。

国際舞台の失態猛省を

石破茂首相はロシアのウクライナ侵略を非難し、国連安保理改革も訴えた。しかし日中首脳会談で習氏と握手をした際、外交マナーに反し習氏の右手を両手で握った。またアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、着席のまま各国首脳にあいさつを返していた。

さらにG20サミット集合写真の際、撮影が終わるや誰とも会話せず足早に立ち去った。各国首脳と対話を図って友好関係を深め、また自らの外交デビューと日本の存在をアピールする絶好の機会にもかかわらず、それを活(い)かそうとしなかった。国際舞台での失態や消極姿勢が目に付く。猛省を促したい。

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