トップオピニオン社説日米韓首脳会談 枠組み制度化で連携強化を 【社説】

日米韓首脳会談 枠組み制度化で連携強化を 【社説】

石破茂首相はペルーの首都リマで、バイデン米大統領および韓国の尹錫悦大統領と日米韓首脳会談を行った。

「調整事務局」設立へ

3首脳は、北朝鮮とロシアの軍事協力の進展などを踏まえ、日米韓の戦略的連携がこれまで以上に重要になっていることを確認。中国を念頭に、インド太平洋地域の一方的な現状変更の試みに反対する姿勢を示すとともに、南シナ海での不法な海洋権益に関する主張に反対する重要性を共有した。

また、3カ国の安全保障や経済分野での協力強化に向けた調整を担う「日米韓調整事務局」を設立することで一致した。この時期、日米韓首脳が3カ国連携の「制度化」を図ったのは、来年1月に発足する第2次トランプ米政権に引き継ぐための施策である。

米国の影響力低下が指摘される中、既存の同盟関係を補完するため、バイデン政権は日米豪印4カ国の「クアッド」や米英豪の「AUKUS(オーカス)」など米国を中心とする多層的な安全保障枠組みを重視しており、日米韓の枠組みをその中核と位置付けている。当初北朝鮮への対応が協議の中心だったが、最近では3カ国協力の裾野をインド太平洋に拡大させ、東南アジアや太平洋島嶼国への影響力を強めている中国への対処も重要な課題となっている。

そのため実務レベルの会合に加え、日米韓3カ国の首脳会談も定例化されるようになり、昨年8月米キャンプデービッドで行われた岸田文雄首相(当時)とバイデン氏および尹氏との首脳会談では、3カ国の戦略的連携を強化し、日米韓の安全保障協力を新たな高みに引き上げることとし、閣僚級などの会合を少なくとも年1回開催することで合意した。

この日米韓のミニラテラルな枠組みは、国際情勢に対する3カ国の認識共有や政策の一致を図る上で有意義である。3カ国の連携協力が揺らぐことのないよう、バイデン氏がイニシアチブを取り、枠組みの制度化を進めようとするものである。

いうまでもなく、日米韓の3カ国はインド太平洋地域の平和と安定に関し共通の利益を有しており、常に緊密な連携を図っていくことが、中朝の脅威への対応を含め、さまざまな安全保障上の課題に対処する上で必要不可欠だ。日米韓3カ国協議の枠組みは、そのための最も重要なスキームである。

共同歩調で中朝に対処を

トランプ次期大統領は政権1期目に北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記との親密な関係を構築した。だが、この頃と比べ、朝鮮半島情勢は大きく変わった。北朝鮮はミサイル技術を向上させ、またロシアとの接近も進めるなどその脅威は高まっている。当時、韓国は北朝鮮に融和的な文在寅政権だったが、現在の尹政権は北に厳しい姿勢で臨んでおり、日韓や米韓の関係も大きく改善された。

このような戦略環境の変化の中、日米韓3カ国が共同歩調を取り北朝鮮や中国に対処することが最善のアプローチである。第2次トランプ政権発足後もこの枠組みを最大限活かしていくことが肝要だ。

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