トップオピニオン社説2期連続プラス 十分な物価高対策が必要だ【社説】

2期連続プラス 十分な物価高対策が必要だ【社説】

個人消費を牽引(けんいん)役に実質年率0・9%増と2期連続のプラス成長――。2024年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、民間シンクタンクの予測(10社平均で年率0・6%増)を上回る良い数字となった。

もっとも、一過性の要因も目立ち、成長力に力強さは見られない。物価高が依然として成長の重しになっており、月内にまとめる経済対策では十分な物価高対策が欠かせない。

実質賃金再びマイナスに

内需の柱である個人消費は前期比0・9%増と2期連続のプラスとなった。設備投資0・2%減、住宅投資0・1%減、公共投資0・9%減と他の内需項目が不振の中、独り気を吐いた形である。

外需は輸出0・4%増に対して輸入が2・1%増と大きく伸びたため、成長率にはマイナスに寄与(0・4%)した。しかし輸入の伸びは相応に内需があったことを示すから、悪いことではない。ただ、7~9月期の個人消費の伸びには、認証不正問題の反動による自動車販売の回復や、南海トラフ地震臨時情報、台風に起因した備蓄用食料の増加といった一過性の要因が目立つ。

もちろん、個人消費が伸びた背景には、今春闘で5・10%(連合集計)と33年ぶりの高い伸びとなった賃上げや、政府による定額減税などがあり、それらが消費を一定程度下支えしたとみられるが、前述の一過性要因を加えての0・9%増である。今後、そうした要因がなくなった場合、消費にどれだけの伸びが期待できるのか。

食品の値上げ品目数は一昨年、昨年から格段に減ってきてはいるものの、それでも物価高は収まらない。スーパーでは消費者の商品に対する選別意識が高く、節約志向が一段と高まっているという。

高い賃上げや好調な企業収益によるボーナスにより、6月に27カ月ぶりにプラスに転じた実質賃金は、8月に再びマイナスに戻り、9月も前年同月比0・1%減と2カ月連続のマイナスとなった。9月は政府による電気・ガス代補助の再開で、物価上昇のペースは鈍化したものの、給与の伸びが追い付かないのである。

補助が再開された9月でさえ、実質賃金がマイナスとなれば、補助が終わる11月以降の賃金環境はさらに厳しくなることが予想される。

政府は月内に策定を目指している総合経済対策で、補助の来年1月から3月までの再開を検討しているが、十分な支援が欠かせない。

海外環境に賢明な対処を

気になるのは、内需のもう一つの柱である設備投資の不振と輸出環境の悪さ、トランプ次期米政権の政策運営である。設備投資は前期に旺盛だった工場建設の反動減もあるが、上場企業の24年9月中間決算が4年ぶりの減益となっており、それが響かないか心配である。

海外環境の悪さは所与として仕方ないが、米次期政権で特に財政拡張的な政策が取られた場合、さらなる円安を招き、輸入物価の上昇につながる恐れもある。政府・日銀には為替動向を注視し賢明な対処を望みたい。

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