今月施行された改正道路交通法では、自転車の運転中にスマートフォンなどを使う「ながら運転」が厳罰化され、自転車での酒気帯び運転が新たに罰則の対象となった。
自転車は法律上、軽車両に位置付けられるが、免許なしで誰でも気軽に乗れるため、交通ルールを十分に学ぶ機会がないまま利用する人も多い。教育現場や自転車販売店などとも協力し、周知を徹底してほしい。
事故件数は過去最多に
警察庁によると、今年1~6月に起きた、ながら運転による自転車の死亡・重傷事故は全国で18件。統計を取り始めた2007年以降で最多だった。また、自転車だけでなく自動車のながら運転による事故についても58件と過去最多になっている。
単にスマホが普及しただけでなく、機能の向上によってより手放せないツールになったことや、位置情報を利用したコンテンツが充実し、移動中にスマホの画面を見る人が増えたことも影響しているのではないか。ルールの周知に当たっては、警察などによる啓蒙活動のほかに、自転車の販売時やスマホ使用時に利用者に伝わるよう、関係事業者の協力を得ることも重要になるだろう。
ながら運転自体はこれまで都道府県の公安委員会規則で禁止され、違反した場合には5万円以下の罰金が科された。新たな罰則は6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金、事故を起こすなどした場合には1年以下の懲役または30万円以下の罰金となる。
また飲酒運転については、これまでアルコールの影響で正常な運転ができない状態の「酒酔い運転」のみが処罰の対象だったが、酒気帯び運転にも新たに罰則を設けた。違反した場合は3年以下の懲役または50万円以下の罰金、酒類や自転車を提供した側にも罰則が科される。こちらもルール周知には飲食店などの協力が欠かせない。
このほか今年5月に成立した改正道路交通法では、自転車の交通違反に対して反則金を納付させる「青切符」制度を導入することが盛り込まれており、26年5月までに施行される予定だ。また、見た目が電動アシスト付き自転車に似た「モペット」と呼ばれるペダル付き電動バイクについても、バイク扱いとなることを明記し、運転免許証やヘルメット着用が義務付けられていることを明確化した。
新たな危険運転の問題も
近年、新たに問題視されているのが電動キックボードの危険運転だ。昨年7月の法改正で、16歳以上であれば運転免許証なしで利用でき、ヘルメットの着用も努力義務となった。自治体と事業者が主体となって電動キックボードのシェアリングサービスを導入するなど普及も進み、若者を中心に広まっている。
一方、自転車と同じく交通ルールを学ぶ機会が乏しく、信号無視や通行区分違反などの摘発が相次ぎ、一部のポート(車両置き場)が不適切な場所に設置されているといった指摘もある。海外では事故や危険運転の多さから規制強化や全面禁止にかじを切った例もある。場合によっては日本でもルールを再検討する必要があるだろう。