海上自衛隊の掃海艇「うくしま」が福岡県の沖合で火災によって沈没し、機関室にいた3等海曹が行方不明となっている。海自は一刻も早く発見できるよう捜索に全力を挙げるとともに、火災の原因究明と再発防止を徹底すべきだ。
約60年ぶりで2例目
海自と共に捜索に当たっている海上保安庁などによると、うくしまはエンジン周辺から出火し、乗員や他の船舶による消火活動で一度は鎮火したが、再び燃え始めて転覆し、沈没した。海自艦艇が火災で沈没するのは約60年ぶりで2例目。海自は3等海曹の捜索に水中ロボットやヘリコプターなどを投入する考えを示した。
うくしまは下関基地隊の所属で、全長54㍍、510㌧の木製掃海艇。宮崎県沖の日向灘で行われる機雷戦訓練と日米共同の掃海特別訓練に参加するため出港していた。このような形で戦力が失われ、訓練も中止となったことは残念だ。
掃海艇沈没を受け、海自は事故調査委員会を設置。運輸安全委員会も船舶事故調査官2人の派遣を決めた。中谷元・防衛相は「重大事故と認識している」と述べた。海自では今年4月、訓練中の哨戒ヘリコプター2機が衝突、墜落して搭乗員8人が死亡する事故も生じた。再発を防止し、日本を守る任務を果たすことが求められる。
掃海艦艇の役割は重要だ。有事の際には、船舶の安全確保のために日本周辺の機雷を除去したり、逆に海上からの武力攻撃を防ぐために機雷を敷設したりする。掃海部隊が運用する艦艇は、機雷敷設能力と母艦機能を持つ掃海母艦、潜水艦を標的に深海に敷設された機雷の排除能力を持つ掃海艦、沿岸の機雷を除去する掃海艇の3種類に分けられる。
4月には米領グアム島と周辺海域で海自と米海軍との機雷掃海訓練が初めて行われた。通常、日米の掃海訓練は日本の海域で実施しているが、グアム周辺海域に機雷が敷設されると抑止力の要である米空母や原子力潜水艦が展開しづらくなる。この訓練には、台湾有事などを念頭に、日米の掃海能力を示すことで中国を牽制(けんせい)する狙いがあったとみていい。
沈没した掃海艇は6~7月の定期整備では異常はなかったという。ただ、掃海艦艇は金属に反応して爆発する機雷を除去するため木製のものが多い。艇内では、内部が高温になる発電機やディーゼルエンジンを使っているので火災のリスクが高く、2000年以降、掃海艦艇では小規模火災が3件発生している。
海自は繊維強化プラスチック(FRP)製の掃海艦艇の導入を進め、現在のところ18隻のうち6隻がFRP製だ。軽くて丈夫で、木製よりも長持ちするなどの利点がある。ただ難燃性の点では、木製とさほど変わらないとされる。難燃性の高いFRPの開発などで民間とも協力する必要がある。
装備の品質、性能向上も
石破茂首相が自衛官の処遇改善を重視し、関連施策を25年度予算案に計上する考えであることは評価できる。これと共に防衛装備品の品質、性能向上なども進めるべきだ。