男系男子による皇位継承は、わが国皇室が長い歴史をかけて守ってきた伝統であり、日本国の根幹である。国連の女性差別撤廃委員会は、内政干渉、固有文化の破壊になりかねない不当な勧告を削除すべきだ。
皇室典範改正に言及
女性差別撤廃委は日本の女性政策について最終見解を公表し、その中で男系男子に皇位継承を限る皇室典範に言及。女性差別撤廃条約の理念と「相いれない」と指摘し、皇室典範の改正を勧告した。
皇室典範については、2016年の審査時、同様の改正勧告を盛り込む最終見解案に日本側が強く抗議し、記述は削除された。このような経緯があるにもかかわらず、再び改正勧告が出されたことは不可解だ。女性差別撤廃委にはわが国皇室の伝統についての根本的な理解が欠けていると言わざるを得ない。
女性差別の撤廃は徐々に進みつつある。しかし、わが国の皇位継承は男女平等の理念とは性質、次元を異にするものである。時間が経過し、社会が変化するとともに変わるというものではない。
欧州の王室では王位継承の男女平等が進んでいるが、それはあくまで欧州の王室の傾向だ。わが国の皇室は、その成り立ちの性質に基づいて独自の歴史を歩んできた。それが国柄の基礎をつくってきたのである。
皇室典範の改正勧告は国連憲章にある内政不干渉の原則に背くものであり、固有文化尊重の精神にも反するものだ。このような原則が軽々と無視される委員会の極端なリベラル傾向に強い危惧を覚える。
林芳正官房長官は、この勧告について、委員会側に強く抗議し、削除の申し入れを行ったことを記者会見で明らかにした。当然である。
林氏は「皇位継承のあり方は国家の基本に係る事項であり、女子差別撤廃条約の趣旨に照らし、委員会が皇室典範について取り上げることは適当ではない」と指摘した。立憲民主党の野田佳彦代表も「皇統を途絶えさせないための議論は急がなければいけないが、国連に言われて進めるものではない」と語った。
外部からの干渉によって、皇位継承問題が左右されることがあってはならない。ただ、政府の中心にある石破茂首相は、就任前にインターネット番組で「男系の女性天皇の可能性、女系の男性天皇の可能性、これを全部排除して議論するのはどうなのだろうか」と述べ、女性天皇、女系天皇を必ずしも排除しない発言をしている。その後、自民党総裁選期間中に「男系男子でやってきた。それが日本の伝統だ」と軌道修正した。
安定への制度づくり急げ
ある時はリベラル派の発言をしていたのが、総裁選では党内保守派の票を意識して修正する――。ブレの激しい石破首相が、さまざまな圧力で男系男子継承の伝統を揺るがすようにならないか、厳しく見ていく必要がある。
いずれにしても皇位の安定的継承のための施策、制度づくりは喫緊の課題である。そのための議論を遅滞なく国会で進めていくべきである。