トップオピニオン社説【社説】女川再稼働 原発活用推進に弾み付けたい

【社説】女川再稼働 原発活用推進に弾み付けたい

東北電力が女川原発2号機(宮城県石巻市、女川町)を13年ぶりに再稼働させた。2011年3月の東日本大震災後、東日本での原発再稼働は初めてで、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)としても初となる。
深刻化する地球温暖化への対策やエネルギー安全保障強化のため、原発は不可欠だ。女川2号機の再稼働で活用推進に弾みを付けたい。

震災でも事故起こさず

原発事故後、原子力規制委員会の安全審査に合格し再稼働した12基は、いずれも加圧水型軽水炉(PWR)と呼ばれるタイプ。PWRが原子炉の中で生じた高温高圧の水を蒸気発生器に送り、そこで生じた蒸気をタービンに送るのに対し、BWRは原子炉の中で蒸気を発生させ、その蒸気を直接タービンに送って発電する。両者の安全性に差はない。BWRでは、中国電力島根原発2号機(松江市)も年内の再稼働を目指している。

女川原発は東日本大震災を引き起こした巨大地震の震源地から約130㌔の距離にあり、約180㌔の福島第1原発よりも近かった。しかし3基の原子炉は震災翌日の午前1時すぎまでに冷温停止状態に到達し、事故を起こすことはなかった。過去に多くの津波に襲われた地域であることから、敷地を海面から約15㍍の高さに整備するなどの対策が奏功した。

ところが、原発事故後の再稼働まで13年もかかった。女川2号機では、再稼働の前提となる安全対策工事が13年5月に開始。当初は16年3月に終える予定だったが、度重なる追加工事などで完了時期を7回延期し、実際に終えたのは今年の5月だった。巨大な地震や津波に耐えた原発であるにもかかわらず、規制委の安全審査や追加工事を巡る判断は厳し過ぎるのではあるまいか。

女川原発では原発の運転未経験者が全運転員の4割近くに上るなど、13年のブランクがもたらした影響は大きい。東北電は今回の再稼働を人材育成につなげなければならない。

82万5000㌔㍗の出力がある女川2号機の再稼働で、東北電は火力に多くを頼っていた発電コストを約600億円削減できるという。ロシアによるウクライナ侵略が液化天然ガス(LNG)などの価格を高騰させており、化石燃料への依存度を低下させることも大きな課題だ。原発が再稼働している西日本に比べ、東日本の電気料金は高く、女川再稼働が東西格差解消への一歩となることを期待したい。

国民守る電力安定供給を

衆院選では自民党の政治資金不記載問題に焦点が当たり、エネルギー政策を巡る論戦があまり行われなかった。だが電力の安定供給は、国民の生活を守る上で極めて重要だ。

今冬は電力を確保できる見通しが立ったため、節電要請は見送られるが、武藤容治経済産業相は「異常気象や発電所のトラブル停止などのリスクを踏まえると、予断を許さない状況だ」としている。政府や電力会社は、安価で安定した発電が可能な「ベースロード電源」と位置付けられる原発の活用を一層拡大すべきだ。

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