トップオピニオン社説【社説】衆院選与党惨敗 国政の停滞は許されない

【社説】衆院選与党惨敗 国政の停滞は許されない

3年ぶりに実施された衆院選は、自民党が大幅に議席を減らし、公明党も後退して、与党が過半数割れの惨敗を喫した。一方、野党は立憲民主党が躍進したものの、連立を組んで政権を担当する見通しは立たない。

今後、自公と立民が連立政権づくりのための多数派工作を行って政局が混迷する可能性もある。だが、激動する国内外情勢の下、国政の停滞は許されない。

けじめが必要な自民

石破茂首相(総裁)はじめ自民執行部は敗北の責任を取り、辞任を含めたけじめをつけるべきだ。その上で、国の針路を誤らない政権の枠組みづくりに着手してほしい。

自民は256議席あった公示前勢力を191議席に激減させ、単独過半数を失った。派閥パーティー収入不記載問題に関係した議員を非公認にしたり比例重複を認めなかったりする追加処分を行い「政治とカネ」問題に国民の多くの関心が向かった。

選挙戦終盤で、非公認にした候補が代表を務める政党支部に活動費2000万円を支給したことが報じられ、逆風はさらに強まった。他方、公明も8議席減らし石井啓一代表は落選した。

石破首相は選挙前、勝敗ラインとして「与党で過半数」(233議席以上)を挙げていた。だが、結果は215議席と過半数を大きく割り込んだのだから、最高指揮官として責任を取るのが憲政の常道だろう。党の事実上トップの森山裕幹事長も責任を免れないはずだ。しかし、小泉進次郎選対委員長だけが辞任。森山幹事長は「補正予算や来年度予算の編成に向けて微力を尽くしていきたい」とし、続投の考えを示している。これで国民の納得を得られるのか。

「政治とカネ」の問題で「みそぎ」を済まし、政権への信頼を回復して重要課題に本腰を入れて取り組むのが狙いだったろうが、国民から「ノー」を突き付けられたのだ。いま石破自民に求められているのは、執行部の総入れ替えも辞さない解党的な出直しではないか。その上で他党との連立拡大を模索し政権維持を図る必要があろう。

一方、50議席増やした立民の勝因の一つは、自民の「敵失」に嫌気した中間保守層の受け皿となったことだろう。保守岩盤層の自民離反も影響した。野田佳彦代表は「政権交代こそ最大の政治改革と言った以上は、それを追求したい」とし、今月の臨時国会で内閣不信任決議案を共同提出した共産党、国民民主党、日本維新の会に連携を呼び掛ける構えだ。

与野党は責任自覚を

しかし、これは政権交代ありきの野合の追求に他ならない。維新や国民民主が選挙協力の前提として求めた政策協議を先送りし、共産とは距離を置いて多数の選挙区で競合してきたのに、終わってしまえば仲直りして手をつなぐ。それは国民への愚弄(ぐろう)以外の何物でもない。

首相指名選挙を行う特別国会は衆院選後30日以内に開かれる。政権の枠組みを巡る駆け引きの長期化を避けねばならない。約1週間後には米国新大統領が決まる。与野党は外交、安全保障、経済、憲法改正など重要政策の論戦をスムーズにスタートさせる責任を自覚すべきだ。

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