3年ぶりに衆院選が行われ、自民が議席大幅減となった。岸田文雄前政権および発足直後の石破茂政権に国民からノーが突き付けられた形だ。1年前からの岸田政権の超低支持率が、最近まで長期化したツケも回った。自民党はいわゆる「岸破」体制の課題を点検し、敗北の原因を見極めるとともに、再起を図り、喫緊の政策課題とも向き合っていかねばならない。
日本創生解散はどこへ
総選挙に先立つ自民党総裁選への出馬を、現職の岸田氏は不人気から辞退した。その上で、通常より長い15日間の総裁選を全国的にメディア報道で賑(にぎ)わし、その勢いで新政権の発足後、早めに衆院解散し、国民の信任を問うたのは党全体のもともとの計画だった。
だが総裁選では岸田氏が当初、特定候補を推さないと公言していたのに、解散させたはずの旧岸田派議員を、決選投票で挙(こぞ)って石破氏に投票させた。この「貸し」と引き換えの如(ごと)く、石破政権発足に当たっては前政権の政策継承を取り付けた。3年間の岸田政治に失望していた自民支持層が、岸田氏のこうした関与に反発した。石破カラーに期待した向きも、首を傾(かし)げるきっかけとなった。
相手のある外交、緊張感の続く防衛含め、国家の危機管理と国民の安全のためという大義、またその説明があればともかくだ。しかし岸破連携体制は、党内保身と権力維持の自己都合が滲(にじ)み出ている。よほどハンドリングをうまくできずして、政治資金不記載問題を長引かせることは、党勢維持にも、国内外の重要政策課題に対するにもプラスにならない。
だが旧安倍派の牽制(けんせい)に殊(こと)の外、意識を割き、大手メディアが主導した「裏金」なるイメージ語の席捲(せっけん)を許して、未(いま)だこれを峻別(しゅんべつ)する知恵に欠けるのは、岸破体制の欠陥だ。新政権も安倍晋三元首相を国賊呼ばわりした人物の閣僚登用を行い、総選挙でも系列議員の非公認、比例重複除外の対応を際立たせた。
選挙戦では、物価対策や社会保障など世論調査でも国民多数が関心を寄せる課題に十分アピールできず、野党各党からこれでもかと「裏金」攻撃を受け、防戦一方で後退(ずさ)りした。選挙終盤にかけ、議席の自公過半数(計233)維持という石破氏による「低い」目標も、それすら危うくなった情勢がこれを表した。掲げた日本創生解散なぞ、終(つい)ぞ国民の心を捉えることはなかった。
本質的要因を看破せよ
一昨年前、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散は困難と閣議で決定したにもかかわらず、野党とメディアの追及で法理を曲げ、朝令暮改した岸田氏も自己保身を前面にした。結果、数万人に及ぶ信徒の信教の自由侵害という憲法違反の疑義を残し、昨今、国連人権理事会にも報告された。昨年は、LGBT理解増進法制定を岸田氏が裏で主導し、自民の岩盤保守層の離反を招いた。
今回の敗北は岸田政治とこれを受け継ぐ岸破連携にこそ、本質的要因ありと看破すべきだ。それを明確にし、自民党は新しく出直さなければならない。