11月で運転開始から50年となり、国内の稼働原発で最も古い関西電力高浜原発1号機(福井県高浜町)について、原子力規制委員会は今後10年間の点検、管理計画の方針などを盛り込んだ保安規定の変更を認可した。
現行制度で50年超運転が認められたのは初めてだ。エネルギー源を輸入に頼る日本は、原発の長期利用はもちろん、新増設や安全性の高い原子炉開発などによって「準国産エネルギー」である原子力の活用を推進する必要がある。
規制委が高浜1号機認可
高浜1号機は1974年11月に運転を開始。規制委は今回、機器などの安全性評価や管理方針について審査した。熱や放射線を受けた炉内のコンクリートの強度が保たれているとする関電の評価や、一部部品を交換するとした方針などを確認。山中伸介委員長は「高浜1号機は既に40年の運転延長の認可で適合性が確認されている。特に問題になるような点はなかったと考えている」と述べた。
ただ来年6月には「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」が施行され、事実上の「60年超」運転を可能とする新制度が導入される。このため、改めて規制委の審査を受けて認可を得る必要がある。原発の長期利用を広げるためにも、厳重かつ円滑な審査が求められる。
岸田前政権は2022年12月、脱炭素社会実現のための基本方針を決定。再生可能エネルギーや原子力など「脱炭素効果の高い電源を最大限活用する」として、原発の建て替えや運転期間延長を盛り込むなど東京電力福島第1原発事故後の原発政策を転換した。深刻化する地球温暖化への対策でも、発電時に温室効果ガスを排出しない原発の活用は欠かせない。
事故後、再稼働した原発は12基にすぎず、22年度の発電量に占める割合は5・6%にとどまる。しかしロシアのウクライナ侵略に伴うエネルギーの価格高騰など、電力の安定供給に支障を来しかねない情勢に備え、原発を含む多様な電源を確保する必要がある。
この夏も猛暑が続いて電力需給が逼迫(ひっぱく)し、老朽化した火力発電所を稼働させたことが何度もあったという。福島の事故を受けて「原発ゼロ」を唱える向きもあるが、非現実的だ。原子力基本法は昨年5月の改正で、原発活用による電力安定供給と脱炭素社会の実現を「国の責務」だと明記した。規制委は長期化しがちな安全審査の効率化に努めるべきだ。
核燃サイクルの実現を
原発の活用には課題も多い。政府は使用済み燃料を再利用する「核燃料サイクル」の推進を「基本的方針」としているが、日本原燃が26年度中の完成を目指す使用済み燃料の再処理工場(青森県六ケ所村)は、これまで完成延期を27回繰り返している。再処理後の高レベル放射性廃棄物を処分する最終処分場の選定も終わっていない。
核燃料サイクルの実現は、エネルギー安全保障上極めて重要な政策だ。関係者の尽力と共に、政府には国民の理解を広げるための効果的な情報発信が求められる。