トップオピニオン社説【社説】ルッテ新総長 いかにNATOの結束図るか

【社説】ルッテ新総長 いかにNATOの結束図るか

北大西洋条約機構(NATO)の新たな事務総長にオランダのルッテ前首相が今月就任した。ロシアによるウクライナ侵略を受け、中立政策を取ってきたフィンランドとスウェーデンが加盟したことで、NATOは32カ国体制となった。他国の主権と領土を蹂躙(じゅうりん)するロシアに対処するため、ルッテ氏には加盟国の結束に向けた高い調整能力が求められる。

中国が「直接的脅威」に

ルッテ氏はウクライナ支援に加え、集団防衛の強化、パートナー国との連携に取り組む考えを示している。しかし欧州では、自国優先を掲げる極右勢力の伸長やロシアに融和的なハンガリーの支援拒否などがNATOの結束に影を落としている。背景には、ウクライナへの「支援疲れ」がある。

NATOは7月、2025年末までに400億ユーロ(約7兆円)規模の軍事支援を行うことで合意。ドイツにおける司令部新設などを通じ、武器供与や軍事訓練に関して加盟国間の調整機能の強化を図ることを決めた。

当時のストルテンベルグ事務総長は、西側諸国による支援の遅れがウクライナの劣勢を招く事態は「二度と許されない」と断言した。国際法に違反する侵略を容認できないのは当然だ。いかに支援疲れを乗り越え、NATOの結束を図るかがルッテ氏の大きな課題だと言えよう。

またストルテンベルグ氏は、ロシアに接近する中国を警戒。岸田文雄前首相の「欧州大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分」との認識を共有し、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国首脳を3年連続で首脳会議に招待した。

NATOは22年6月改定の「戦略概念」で、ロシアを「最大かつ直接的な脅威」とし、対抗する姿勢を明示。中国にも初めて言及し、その威圧的政策を「挑戦」と見なした。

今年7月に発表された首脳宣言は、中国を「ロシアの重要な支援者」と位置付け、軍事転用可能な部品や原材料をロシアに提供しないよう求めた。米シンクタンク「外交問題評議会」は、中国について「もはやインド太平洋や台湾だけの問題ではなく、ロシア支援を通じてNATOの直接的な脅威になっている」と指摘している。

ハンガリーのオルバン首相が7月、中国の習近平国家主席と会談するなど、NATO内では中国に接近する動きも見られる。しかし、覇権主義的な動きを強める中国への警戒を解くことがあってはなるまい。日本も中国を牽制(けんせい)する上でNATOとの関係を強化すべきだ。

日米基軸に地域安定を

北大西洋条約第5条は、NATO加盟国が「欧州または北米における1カ国またはそれ以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃と見なすことに合意」し、武力行使を含む個別または集団の対応が必要であると定めている。

石破茂首相は自民党総裁選で「アジア版NATO」を掲げたが、まずは地域の安定に向け、日米同盟を基軸に日米豪印4カ国の「クアッド」や日米韓、日米比などの枠組みを強化し、中国の脅威にさらされる台湾との関係を深める必要がある。

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