第50回衆院選が公示された。小選挙区と比例代表合わせて1300人超が立候補し、27日の投開票に向け12日間の短期決戦に挑む。衆院選は政権選択選挙である。発足したばかりの石破茂首相を信任して引き続き政権運営を託すのか、野党が奪取するのかが焦点となる。
3党首交代後の選挙
自民党派閥パーティー収入不記載問題や物価高対策、賃上げなどが主な争点になろう。しかし、与野党は、悪化したわが国の安全保障環境や歯止めの掛からない少子化・人口減少問題など直面する国難を突破するための方策を、財源の裏付けとともに具体的に示し、国民の審判を仰ぐべきである。
石破首相は勝敗ラインを「自民と公明で過半数」とした。政権を継続するために必要なギリギリの数だが、その数すら困難視する分析もあるほど与党に強い逆風が吹いている。パーティー収入不記載問題で、首相が世論に迎合し二重処分に踏み切ったことを受け、野党が批判を強め厳しさを増している。
石破首相は今回の解散を「日本創生解散」と命名した。石破カラーを出すことを狙ったのだろう。首相は、地方が消滅する「静かな有事」への対処が必要で「この大変革を思い切って実行するためには、国民からの信任が必要」との認識を示した。これは理解できる。
ただ石破首相にさらに求めたいのは、国家の安全保障問題や少子化対策など対処が急がれる国難について首相ならではの政策を前面に出し、野党を引き込む土俵を作って真っ向から緊張感を持って論議をすることだ。
中国はわが国の領空・領海侵犯を繰り返し、経済封鎖を想定して台湾を取り囲む形で空母も含めた大規模な統合演習を実施した。石破首相はラオスで、中国の李強首相と初会談したが成果はなかった。今後、中国とどう向き合っていくのか。北朝鮮やロシアへの対策も待ったなしの課題だ。
岸田文雄首相(当時)は毎年3・6兆円の少子化対策を打ち出したが、給付中心の内容に偏っていた。未婚率上昇への対処や女性の働きやすい環境づくりという根本策が欠落している。少子化や人口の減少による国力の減退を食い止めるための英知が求められている。
今回の解散について、立憲民主党の野田佳彦代表は「裏金隠し解散」とし、国民民主党の玉木雄一郎代表は「裏金使い解散」、日本維新の会の馬場伸幸代表は「猫の目解散」などとレッテル張りをして攻勢を強めている。ただ、野党は他にも自民には吸い上げられない民意をもっとくみ取れるはずだ。
今回の衆院選は、自民、公明、立民の3党の党首が交代したばかりのタイミングで行われる。共産の田村智子委員長も1月に就任し、全国レベルの選挙では初陣となる。そうであるからこそ、国家観や政治理念、骨太の重要政策を国民に分かり易く示す必要があるのである。
機会生かして投票を
衆院選の投票率は回復基調ではある。有権者は3年ぶりの政権選択の機会を生かし、投票所に行ってもらいたい。