トップオピニオン社説【社説】衆参代表質問 政策の言行不一致なくせ

【社説】衆参代表質問 政策の言行不一致なくせ

衆参両院の代表質問で、政治とカネの問題、経済・景気対策、外交・安全保障政策などを巡り与野党が幅広い議論をした。所信表明演説に加えて「主権者である国民が(衆院選で)判断する材料」(石破茂首相)が提供された形になる。野党が焦点を当てたのは、自民党派閥のパーティー収入の政治資金収支報告書への不記載を巡る問題だ。

裏金議員対応で変節

首相は、不記載で党員資格停止などの重い処分を受けた議員は、原則として非公認とする方針を示した。このほか不記載があった議員は、公認した場合も比例との重複立候補は認めない方向だ。

立憲民主党の野田佳彦代表は「自民党は不記載議員の大半を公認するのではないか」と追及。日本維新の会の馬場伸幸代表は「裏金に関与した全員を非公認とすべきだ」と詰め寄った。首相は、重い処分を受けた6人以外の処分対象者については「地元の理解が十分に進んでいるか」などを基準に公認の是非を判断するとし、「甘い処分で幕引きを図るものだとは認識していない」と説明した。

首相は当初、不記載議員を原則公認する方針だった。世論の批判を浴びて方針を変えたことは、首相の一貫性や信念のなさを印象付ける結果になった。むしろ党の結束が失われ、衆院選でより多くの議席を失う可能性がある。

政治献金を巡って、馬場代表と共産党の志位和夫議長は企業・団体献金の禁止を訴えた。政治活動に必要な浄財を集める手段を制限することは、いずれ野党自身の首を絞めることにつながりかねない。代替策を示さず批判一辺倒なのは無責任だ。

首相の自民党総裁選での公約・発言と所信表明演説の一貫性のなさは、ほかのテーマでも追及された。選択的夫婦別姓制度の導入については「国民の間にさまざまな意見があり、政府としては、国民各層の意見や国会における議論の動向などを踏まえ、さらなる検討をする必要がある」と慎重な考えを示した。総裁選では導入に意欲を示していたが、国民のコンセンサスが得られない中で急ぐ理由は見当たらない。

アジア版NATO(北大西洋条約機構)創設に関しては「一朝一夕で実現するとは思っていない」と、あくまでも長期的な目標であるとした。「一国の総理としてまずは喫緊の外交・安全保障上の課題に取り組んでいく」という決意は当然だ。

総務相、首相と足並み

野田代表から安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」の評価を問われると、村上誠一郎総務相が答弁に立って「デフレでない状況をつくり出し、GDP(国内総生産)を高め、雇用を拡大したと評価されていると承知している」と述べた。首相からデフレ脱却が最優先の経済財政運営や投資拡大などの指示を受けているとし、「内閣の一員として与えられた職務に全力で取り組む」と決意を語った。

村上氏は安倍氏を「国賊」と表現して党役職停止1年の処分を受けた。これまでの批判的な立場を封じたが、村上氏の言動は政権を揺るがす要因にもなりかねない。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »