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【社説】ハリス副大統領 懸念されるリベラル政策

米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が、11月の米大統領選で民主党候補のハリス副大統領が「唯一の愛国的な選択肢だ」とする社説を掲載した。しかし、ハリス氏の掲げる政策で米国を強くし繁栄させられるのか疑問が残る。

中絶の権利擁護訴える

ハリス氏は女性票の獲得に向け、人工妊娠中絶の権利擁護の訴えを強めている。この中で、共和党候補のトランプ前大統領らが女性の体に「危機をもたらしている」と非難している。

一方、トランプ氏は自身のことを「米国史上、最もプロライフな大統領」と述べてきた。「プロライフ」とは胎児の命を尊重することを意味する言葉だ。トランプ政権時代に保守派の連邦最高裁判事3人が任命され、2022年6月には中絶を憲法上の権利とした1973年の「ロー対ウェイド判決」を覆すことを決定した。

中絶反対派の多くは、受精した段階から一つの命と考え、中絶を「殺人」と見なす。「命は神からの賜物(たまもの)」と説くキリスト教信仰に基づくものだ。

米国の独立宣言は「すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」とうたっている。こうした権利を確保するための政府をつくるというのが米国の建国精神だ。だが、ここにハリス氏の掲げる中絶の権利が含まれるとは思えない。

また移民問題を巡って、ハリス氏は不法移民の取り締まり厳格化を訴えている。しかしトランプ氏は、バイデン政権下で不法移民が急増し、移民政策を担当してきたハリス氏の責任は大きいと批判している。

米国は歴史上、多くの移民を受け入れてきた。だが、それはあくまでも合法的なものでなければならない。不法移民は中南米だけでなく中国からも増えており、安全保障上も大きな問題となっている。トランプ氏は、自身が大統領に返り咲けば「米国史上最大の強制送還作戦」を実施すると宣言している。

バイデン政権の移民政策には甘さがあったと言わざるを得ない。ハリス氏もこれまで副大統領として有効な不法移民対策を講じてこなかった。トランプ氏の批判は当然だと言えよう。

民主党は政策綱領で、格差是正のために法人税率を21%から28%に引き上げることを打ち出した。実現すれば、企業が設備投資を控え、景気が停滞するとの見方も出ている。これに対し、トランプ氏は法人減税を掲げている。2021年1月の連邦議会議事堂乱入事件を機にトランプ氏と距離を置いた大企業経営者が、大統領選が近づく中、最接近する動きが目立っている。

「ポリコレ」強まらないか

「リベラル全体主義」とは、自らの価値観を他者に押し付けるリベラル派の排他的、全体主義的な傾向を示す言葉だ。かつて不法入国を取り締まる米移民税関執行局の廃止など急進左派的政策を支持してきたハリス氏が大統領に就任すれば、リベラルな価値観にそぐわない言論を封じ込める「ポリティカル・コレクトネス」が強まらないか懸念される。

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