トップオピニオン社説【社説】ハマス襲撃1年 パレスチナ自治回復目指せ

【社説】ハマス襲撃1年 パレスチナ自治回復目指せ

パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスのイスラエル襲撃から1年。イスラエルはハマス殲滅(せんめつ)へ、攻撃を開始し、すでに民間人を含む4万人以上が死亡した。このような惨劇を繰り返さないためにも今こそ、自治政府主導のパレスチナを回復し、イスラエルとの「二国家共存」の原点に立ち返る時だ。

イランがイスラエル攻撃

ハマスは2007年にパレスチナ自治政府との戦闘の後、実効支配を確立。パレスチナは自治政府が支配するヨルダン川西岸とガザ地区に分断された状態が続いている。ハマスは1987年のインティファーダ(反イスラエル民衆蜂起)の中で「イスラエルの破壊」を目的として誕生した武装組織。自治政府発足前からイスラエル軍との衝突、ロケット攻撃を主導してきた。

ガザ地区からのイスラエルへの越境攻撃はこれまでも発生してきたものの、昨年10月7日のような大規模で残忍な襲撃は初めてで、イスラエルはじめ世界に大きな衝撃を呼んだ。

すでにハマスの戦闘部隊の大部分が破壊されたとされ、ガザでの戦闘は縮小傾向にある。一方で、北のレバノンからイラン系イスラム教シーア派組織ヒズボラが、南のイエメンからは親イラン武装組織フーシ派が、ハマスを支援する格好で攻撃を続けている。

ハマスはイスラム教スンニ派の組織であり、シーア派のイランとは本来、犬猿の仲だが、反イスラエルで一致し、軍事的、資金的支援を受けてきた。ヒズボラ、フーシ派は共にシーア派で、イスラエル破壊を国是とするイランの代理組織としてハマスと連携している。

イスラエルはヒズボラ、フーシ派を含む3正面での戦闘を強いられてきた。ハマス弱体化を受け、戦闘の焦点はヒズボラに移っているが、厄介なのはこれら3組織を支援するイランだ。

イランは4月、シリアのイラン領事館への空爆で革命防衛隊司令官が死亡したことへの報復として、イスラエルに向けてミサイル、ドローン約300発を発射。大部分は迎撃され、ほとんど被害は出なかった。

7月、ハマスの最高指導者ハニヤ氏がイラン訪問時に爆殺され、先月下旬にはヒズボラの最高指導者ナスララ師が殺害された。これを受けて、イランは再び約180発のミサイルをイスラエルに撃ち込むが大部分が迎撃され、攻撃は「失敗」(米ホワイトハウス)とされている。両国とも、大規模な戦闘は望んでいないとされているものの、極度の緊張状態が続いている。

米国などの関与が不可欠

ガザ地区では女性、子供を含む非戦闘員の多くが、攻撃の巻き添えで死亡している。イスラエルはハマスを標的とした攻撃だと主張するが、民間人の被害を抑えるための最大限の努力を惜しんではならない。レバノンでも、死者はすでに数百人に上り、100万人超の人々が避難を強いられている。

イスラエルにとっては自国の存亡を懸けた戦いだ。パレスチナ問題に、イランが支援するヒズボラ、フーシ派が加わり、事態は複雑さを増している。鎮静化への米国を中心とする国際社会の関与が不可欠だ。

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