トップオピニオン社説【社説】石破自民新総裁  挙党態勢構築し舵取りを

【社説】石破自民新総裁  挙党態勢構築し舵取りを

史上最多の9人が立候補した自民党総裁選は、石破茂元幹事長が決選投票で高市早苗経済安全保障担当相を制して第28代総裁に選出された。自民党は次の衆院選の「顔」に石破氏を選んだ形だ。

10月1日に召集される臨時国会で岸田文雄氏の後継として新首相に指名されるが、背負う課題は極めて多く重い。まずは挙党態勢を構築し、国家の舵(かじ)取りを誤りなく進めてもらいたい。

憲法、皇室典範に懸念

総裁選では1回目の投票で高市氏に次ぐ2位にとどまり、決選投票で国会議員の支持を広く集め逆転勝利した。ただ21票という僅差だったため、その後の人事次第ではしこりが残るのではないかとの見方が出ている。

2012年の総裁選で自身が逆転で安倍晋三氏に敗れた際、安倍氏は幹事長という最も重たいポストで石破氏を処遇して挙党態勢を築くよう図った。高市氏をはじめ、総裁選で争った他の7人を来週予定されている党役員・内閣人事でどう起用するか注目したい。

石破氏が勝利した背景には、国民の人気が根強く選挙戦で野党との闘いに有利なこと、世界の安全保障環境が厳しさを増す中、安全保障政策に精通していること、地方創生や防災をライフワークとしてきたことなどへの評価があったろう。

ただ懸念されるのは、安倍政権時代に築いた「強い自民党」のエネルギー源となった保守岩盤層を取り戻せるのかだ。岸田政権は安全保障3文書の改定や原発の新増設・建て替え方針決定などの成果を挙げた。だが、LGBT理解増進法の成立などによって保守層離れが進み、岩盤層が溶解して内閣支持率も急落した。

石破氏は先月、『保守政治家 わが政策、わが天命』という新著を出版し、女系天皇容認を含めて議論するよう主張したが、これは無視できない。石破新内閣は皇室典範改正案を取りまとめる重責を担う。男系継承という皇統の原理の変更が決してないよう慎重に扱わなければならない。

石破氏は子供の心の健全な成長を妨げ、家族の一体感を失わせる可能性の大きい選択的夫婦別姓の導入にも前向きだ。自民党がリベラル左派を取り込もうとすればするほど、保守層離れが進む。結論を急げば党の亀裂が深まり、石破氏の求心力は弱まろう。

憲法改正案でも、石破氏は総裁選で、現行の9条1項・2項とその解釈を維持し、自衛隊を明記するとともに自衛の措置(自衛権)についても言及すべきとする自民党案を受け入れ、戦力不保持を定めた2項の「削除」という持論を封印してしまった。今後、野党から追及されようがどう説明するのか。改憲の行方が懸念される。

公明との信頼関係を

石破氏は衆院の解散・総選挙について「なるべく早く」としつつも「自民党の都合だけで勝手に決めてはいけない」とし、解散まで一定の時間を置く考えを示した。「自由闊達(かったつ)に真実を語る、公平、公正で、謙虚な政党をつくりたい」とも語ったように、公明新執行部との信頼関係づくりも課題となろう。

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