バイデン米大統領の地元、東部デラウェア州ウィルミントンで、日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」の首脳会議が開かれた。冒頭、岸田文雄首相は、安全保障環境は一層厳しさを増し、法の支配に基づく国際秩序が脅かされているとし、4カ国が「自由で開かれたインド太平洋」への強固なコミットメントを国際社会に示し続けることが重要だと指摘した。
脅迫的操船に深刻な懸念
会合では中国を念頭に、南シナ海での威圧的で脅迫的な操船に深刻な懸念が表明された。またインド太平洋地域で米沿岸警備隊の巡視船に日豪印の海上保安当局の職員が乗船し、法執行活動を相互に確認し、連携を高める取り組みを2025年から開始するなど海洋安全保障協力を強化することで一致した。
このほか、サイバーセキュリティーや重要・新興技術の開発、国際保健や災害支援などで協力を進めていくことも申し合わせ、これらの成果を盛り込んだ共同声明が発表された。
バイデン氏と岸田首相がクアッド首脳会議に参加するのは今回が最後になる。日米同盟の強化と共に、クアッドの体制整備に取り組んできた両首脳の労を多としたい。
オーストラリアのアルバニージー首相が述べたように、クアッドは「共通の価値観に基づく国家間の関係」であり、11月の米大統領選の結果、トランプ前大統領が政権を奪還することになっても、その結束は引き続き維持していかねばならない。
そして合意された事項の速やかな実施に努めるとともに、高まる中国の脅威に怯(ひる)むことなく、インド太平洋地域における海洋の自由と国際法の秩序を守り抜く覚悟と決意が日米豪印の4カ国に求められる。
首脳会議でも指摘されたように、最近の南シナ海における中国船舶のフィリピン当局に対する威圧的かつ危険な行動は目に余るものがある。日本に対しても、中国軍機が領空を侵犯し、また空母部隊が接続水域に侵入するなど挑発的な行動が相次いでいる。
さらに中露にイラン、北朝鮮を加えた権威主義諸国は民主主義諸国に対抗するための枢軸を形成し、武器や軍事技術の供与など相互の連携を強めている。日本周辺でも今月、中露海軍の共同訓練が行われた。
こうした動きを容認することはできない。権威主義諸国の跳梁(ちょうりょう)を抑えるには、日米豪印の協力をさらに強化することが不可欠だ。4カ国間の意見調整や連携、情報交換などを一層緊密なものとするため、クアッドの常設機構整備が必要ではないか。
「航行の自由作戦」合同で
また中国の挑発行動を抑止するため、今回合意された4カ国海上保安当局の共同活動をさらに一歩進め、4カ国の海軍や海上自衛隊艦艇で合同艦隊を編成し、南シナ海や台湾海峡、南太平洋などで「航行の自由作戦」などを実施することも検討してはどうか。
中東では、紅海を航行する民間船舶に対するイエメンの親イラン武装組織フーシ派の攻撃に対処するため、米国など10カ国の海軍が多国籍部隊を編成し活動している。参考にすべきだ。