【社説】露軍機領空侵犯 撃墜の意思示す法整備を急げ

ロシア軍の哨戒機1機が3度にわたり我が国の領空を侵犯し、緊急発進(スクランブル)した自衛隊機は強い光と熱を放つ「フレア」による警告を初めて行った。8月には中国軍機が我が国に対して初めて領空侵犯しており、中露の軍用機による危険な軍事的挑発を断じて許容することはできない。

「フレア」を用いて警告

中露などの軍用機に限らず、無人機が軍事上大きな役割を果たす時代になっている。国際法で排他的主権が認められる領空へ不審な侵入行為を繰り返す飛行体の撃墜を可能とする法整備を急ぐべきだ。

憲法9条の条文から軍を持たず交戦権も否定した我が国は国防、安全保障に大きな弱点を持つ。海外では領空侵犯した外国軍機を撃墜する例がある。2015年にトルコは自国の領空を侵犯したロシア軍戦闘爆撃機Su24を撃墜した。外国軍機の侵入は急迫不正の侵害の恐れがあり、国民の生命、財産を守るためやむを得ざる措置だ。

しかし、我が国は領空侵犯機が攻撃してこない限り武力行使して撃墜することはできない。スクランブルは戦闘機2機で行うが、1機が攻撃を受けた場合はもう1機が反撃するという構えだ。ソ連時代から我が国領空を軍用機で侵犯してきたロシアは、日本の領空は通過するだけであれば警告射撃などを受けても撃墜されることはないと熟知している。

23日に北海道・礼文島北方で3度も領空侵犯したロシア軍機も、スクランブル機の警告を無視して2度目、3度目の領空侵犯をした。約5時間も礼文島周辺の領空の境界をかすめて飛行し、領空に侵入した。「フレア」は我が国が領空侵犯機に取り得る最も強い警告の一つとされるが、領空侵犯を許す時点で制空権を懸けた空の守りから遠い措置である。

領海侵犯にも我が国は決定的な手だてはなく、1999年に北朝鮮からの不審船が能登半島沖で執拗(しつよう)に領海侵犯しても威嚇射撃までが法的に限度だった。このため、みすぼらしい船を相手に海上自衛隊の護衛艦や海上保安庁の巡視船に装備された武器は使えず、武力行使に当たらないようにネットをスクリューに絡ませようとするなど苦肉の策が試みられた。

これに類似して、今回のロシア軍機に対する「フレア」も武器ではない発光体を用いた警告で相手を驚かそうという措置にすぎない。我が国が武力行使できないとみて、中露が続けて軍用機で領空侵犯を行っている事態を深刻に懸念すべきだ。警告射撃や「フレア」射出による警告に、さらなる威力を持たせるためには、領空侵犯した外国軍機に対して撃墜する意思があると示す必要があろう。

国守る断固とした方針を

自民党総裁選に出馬している石破茂元幹事長は、領空侵犯への対応を定めた自衛隊法84条の「必要な措置」について「撃墜していいのか、きちんと答えを出すべき」との認識を示した。次期首相を決める総裁選で各候補は、厳しさを増す安保環境の中で起きている領空侵犯問題に、国を守る断固とした方針を打ち出すべきだ。

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