【社説】野田立民新代表 「敵失」頼みから脱却できるか

野田佳彦元首相が立憲民主党の新代表に選出された。野田氏は「本気で政権を取りにいく」とし、挙党態勢の構築や「穏健な保守層」への支持拡大を訴えた。主に自民党のパーティー券収入の政治資金問題を非難して政権交代の必要性を強調してきたが、国民の関心は政権担当能力を持っているか、にある。

「敵失」頼みから脱却し、国家・国民の平和と安全を守る気概を示し、そのための政策を立案していくことが肝要だ。

政権担当能力が問題

代表選を戦った候補に共通していたのが、国民の生命や財産の安全を保障する外交・防衛政策で疑問を感じるものばかりだった点だ。野田氏は「外交や安全保障政策を極端に変えることはできない」とし日米同盟関係を基軸とする考えを示したが、集団的自衛権の限定的な行使容認については党の方針を踏襲し「違憲」とした。これで、日米防衛戦略に支障は出ないか。

ミサイル発射を繰り返す北朝鮮や覇権主義的な動きを強める中国などの軍事的な脅威にさらされているわが国は「国家安全保障戦略」を策定した。ただ、野田氏から台湾有事や「辺野古移設」への明確な対応や戦略を聞けなかった。北朝鮮による拉致問題解決への意気込みや方策も示されなかった。首相経験者である野田氏には、安全保障環境の変化を現実的に捉え直すことを求めたい。

「政権交代」を目指す以上、政権担当能力が問われるのは当然である。野田氏は、最近発生した石川県能登地方の記録的豪雨に言及し、「新首相は衆院解散に踏み切る前に補正予算を編成し、予算委員会を開いて成立させるべきだ」との認識を示した。それには賛成する。だが、自民党任せでなく自ら補正予算案を作成し、政権担当能力を示してはどうか。

挙党態勢の構築は当面の課題だ。代表選の決選投票で負けた枝野幸男元代表は「一兵卒で頑張る」としている。だが、新体制は小川淳也幹事長、重徳和彦政調会長、笠浩史国対委員長に決まり、3人とも代表選で野田氏を支持したことから早くも「これではノーサイドではない」との声が出ている。平成24年に衆院解散を断行し、民主党を野党に転落させた当時の野田首相への批判も根強くある。

野党共闘についても決断を下さなければならない。枝野氏が代表を辞める原因となったのは日本共産党との連携による衆院選敗北が原因だった。今回、枝野氏は野田氏と共に安全保障政策で共産党の路線と一線を画したことで、連携を深めることは困難になったろう。国民民主党や日本維新の会との共闘に傾斜していこうが、政策面での結集軸をつくらなければなるまい。

「改憲」に変身可能か

その際、問題となるのが憲法改正への姿勢だ。立民は「論憲」を主張しながら、事実上、憲法審査会で審議を妨害してきた。野田氏も「論憲」を言いながら、改憲論議には消極的な姿勢を示した。党内事情を考慮すれば、そう言わざるを得ないかもしれない。ただ、もとは自称「新憲法制定論者」のはずだ。改憲に積極的な両党との協議で変身できるか注目したい。

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