【社説】能登豪雨被害 復興へ道路寸断まず解消を

元日の地震から復興途上にある石川県・能登地方を豪雨が襲った。7人が亡くなり、2人が行方不明、連絡が取れない人も複数おり、孤立した集落もある。行方不明者の捜索、孤立集落の解消を急がなければならない。

平年9月の2倍超の雨量

気象庁によると20日午後6時ごろから降り始めた雨は22日午後4時までの間に輪島市で498㍉、珠洲市で394㍉に達し、いずれも平年の9月1カ月の雨量の2倍を超えた。この大雨で23の河川が氾濫。9市町で避難所が82カ所開設され、1000人近くが身を寄せている。

また、相次いで土砂崩れが発生。道路も寸断され、通行止めの箇所が50カ所近くに上っている。孤立集落は輪島市で99カ所、珠洲市で13カ所、能登町で3カ所の計115カ所に上った。

河川の氾濫で仮設住宅が浸水被害に遭ったのも大きな痛手だ。輪島市、珠洲市の計9カ所の仮設住宅が床上浸水した。地震被害で住む所を失い、この夏ようやく仮設住宅に入居し、そろそろ仮設での生活に慣れてきたところという人も多かっただろう。そういう時にこの大雨被害だ。心が折れてしまいそうな、その心持ちを思うと胸が痛い。

能登は大雨被害に遭うことは比較的少ない地域だ。浸水した仮設住宅も、平野部が少ないということもあるが、過去の経験から問題ないとして設置箇所を選定したものとみられる。しかし、近年の気候変動で多発するようになった線状降水帯に対しては、これまでの経験や統計を超えた状況を想定する必要がある。これは能登に限ったことではない。

輪島市の国道249号の中屋トンネル付近では大規模な土砂崩れが発生し、2人が死亡した。そのうち一人は、国土交通省による地震の復旧工事に当たっていた作業員の男性とみられる。

能登観光の目玉の一つである棚田「白米千枚田」の近くでも土砂崩れが起き、道の駅「千枚田ポケットパーク」周辺の道路が通行できなくなっており、道の駅に身を寄せている人もいる。地震被害を受け一部復旧作業の進んでいた棚田も、のり面の崩落が確認されている。

能登半島とくに奥能登地方は高い山はないものの、全体的に山がちで、中には山がそのまま海に落ち込むような所もある。今回、相次いで土砂崩れが起きたのは、地震の影響で地盤が緩んでいた箇所があったためだが、これは日本列島の至る所に当てはまる。地震の後の大雨など、災害が連鎖し被害が拡大するケースがあることを忘れないようにしたい。

願われる今一つの後押し

元日の地震からの復興の遅れが目立つ能登だが、大雨被害でさらに遅らせてはならない。地震で被災した家屋の公費解体を急ぐことが復興の第一歩である。道路の寸断は、解体作業で出た瓦礫(がれき)などの運搬作業にも支障を来す。速やかに道路を復旧させる必要がある。 大雨被害も能登の復興の歩みを止めることはできない。しかし、地震発生から9カ月近くになる中、能登復興への関心が薄れつつあることも事実だ。大雨被害で復興への今一つの後押しが願われている。

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