【社説】新幹線連結事故 原因究明急ぎ安全意識高めよ

東北新幹線上り線の古川-仙台間で、走行中のはやぶさ・こまち6号(17両編成)の連結が外れ、緊急停車した。

幸いにもけが人は出なかったが、当時新幹線は時速約315㌔で走行しており、一歩間違えば大事故が生じかねない状況だった。JR東日本は原因究明と再発防止を徹底すべきだ。

4万5000人に影響

JR東によると、走行中に非常ブレーキがかかり、運転士がモニターなどではやぶさとこまちが分離していることに気付いた。連結が外れた車両は、古川駅から東京側約6㌔の地点(宮城県大崎市)で停車。はやぶさには約200人、こまちには約120人の乗客がいた。車両は約4時間停車した後、仙台駅に到着。東北新幹線は東京-新青森間の上下線で約5時間運転を見合わせ、計72本が運休、約4万5000人に影響した。

走行中に車両の連結が外れたのは初めてだ。はやぶさとこまちは約6万㌔走行するごとに行う詳細な検査を最近実施し、共に異常はなかったという。外れた連結器の外観にも異常は見られなかった。

連結部は車両の運転台にあるボタンを押すと外れるが、停車中以外は作動しない仕組みだ。運転士らへの聞き取りでも操作ミスなどは確認されなかったという。ただ経年劣化などで連結を固定するロックが緩み、振動で外れた可能性も指摘されている。JR東は原因究明を急がなければならない。

気掛かりなのは、鉄道事業者の安全意識が低下していないかということだ。JR貨物や京王電鉄子会社、東京地下鉄(東京メトロ)などでは、車両の整備作業のデータを改竄(かいざん)するなどの不正が行われていたことが発覚した。不正を放置すると車軸などの金属疲労の進行が速まる恐れがあり、7月には山口県内でJR貨物の列車の脱線事故も発生している。旅客車両が脱線すれば大惨事となりかねない。

斉藤鉄夫国土交通相はJR貨物のデータ改竄について「鉄道輸送の安全確保の仕組みを根底から覆す行為で、極めて遺憾だ」と述べた。全ての事業者は心を引き締め、安全最優先の意識を徹底する必要がある。

新幹線を巡っては2017年12月、JR西日本が運行していた「のぞみ」の台車に亀裂が見つかる問題が発生した。亀裂は破断寸前で、乗務員らが異臭や異音に気付いたものの、乗客約1000人を乗せて名古屋駅まで約3時間にわたり運行が続けられた。運輸安全委員会は新幹線初の重大インシデントに認定した。重大インシデントとは、事故に至る兆候があったとするトラブルだ。

公共交通機関は緊張感を

亀裂が生じたのは、製造元の川崎重工業が台車枠の製造過程で底面を削り、鋼材の厚さが基準より薄くなっていたことが原因だが、異常が生じていたにもかかわらず運行を続けたのは、JR西に重大事にはならないとの無意識の思い込みがあったためとされる。

鉄道だけでなく全ての公共交通機関は、小さなミスやトラブル、ごまかしが大きな事故を招くとの緊張感を持ち、安全確保に努めなければならない。

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