【社説】トランプ氏警護 暗殺犯から米大統領選を守れ

米大統領選挙の共和党候補であるトランプ前大統領が、再び暗殺未遂事件に巻き込まれた。逮捕された男はロシアの軍事侵攻を受けるウクライナを支援する活動に携わっていたが、どのようにしてトランプ氏のスケジュールを把握したのかなど不審な点が残る。捜査の進展が待たれるが、選挙まで2カ月と迫る中での大統領候補暗殺未遂は極めて遺憾であり、警護を一層強化して大統領選を暗殺犯から守らなければならない。

SKS半自動小銃を所持

トランプ氏は米フロリダ州ウエストパームビーチに所有しているゴルフ場でプレー中に、照準器付きのSKS半自動小銃を所持して未明から潜んでいた犯人に狙われたが、大統領警護隊(シークレットサービス)の働きにより安全な場所に移動されて無事だった。

小銃の製造番号は消されており、当日のゴルフの予定は公表されてなく、事前の予定にもなかったといい、連邦捜査局(FBI)によって逮捕されたライアン・ラウス容疑者は12時間ほど待ち伏せをしていたとみられている。ただ、広大な全米を移動しながら各州で選挙戦を展開する大統領候補に、半日程度の待ち時間で僅(わず)か400㍍程度にまで接近したことを偶然とするには腑(ふ)に落ちない。

旧ソ連が開発したSKS半自動小銃の有効射程は400㍍であり、犯人はトランプ氏に照準を合わせて引き金を引く手前だった可能性が高い。現にシークレットサービスは低木から突き出ていた銃口に気が付いて発砲しており、間違えば取り返しの付かない事態が差し迫っていたとみるべきだ。

トランプ氏は共和党大会直前の7月13日にもペンシルベニア州バトラーで行われた選挙集会に登壇し演説中に銃撃されており、銃弾が右耳をかすり奇跡的に一命を取り留めた。それから2カ月しか経(た)っていないところで再び暗殺未遂に遭遇したことは、分断された米社会に潜む暗殺者らの意図が危険な水準を超えていると直視すべきだ。

容疑者がウクライナ支援活動を行っていたことから、ウクライナを巡る犯行ともみられている。10日の大統領選テレビ討論会では、民主党候補のハリス副大統領がロシアの侵攻時にトランプ氏が大統領ならロシアのプーチン大統領は「今ごろキーウにいるだろう」と訴えたのに対し、トランプ氏は自分が大統領なら「プーチン氏はモスクワにとどまった」と応酬した。共和党はバイデン政権のウクライナ追加支援に議会で待ったを掛けた経緯もある。

だが、このような政策対立は選挙で決着をつけるべきであり、候補者を殺害しようとする行為は民主主義の破壊そのものだ。断じて許してはならない。

政治的憎悪は危険な状況

これまでバイデン政権はトランプ氏の出馬を潰(つぶ)そうと、公権力を用いて任命した特別検察官、地方検察官によって四つの刑事事件、計91の罪で訴追した。米社会で深まる政治的憎悪は危険な状況になっている。米政府は総力を挙げて警護を徹底してトランプ氏はじめ全ての候補者を守り抜き、大統領選を成功させなければならない。

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