オーストラリアで日豪外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)が開かれ、中国の「力による現状変更」に強い反対を表明し、共同抑止力の強化、安全保障政策の緊密化などを盛り込んだ共同声明を発表した。日米同盟に加え太平洋の域内大国である豪州との連携を強化し、太平洋地域の民主主義を守り、共産党独裁体制の中国の影響力を抑制していくべきだ。
島嶼国支援へ新枠組み
日豪は声明で「国家安全保障政策をかつてなく緊密に連携させていく」としており、自衛隊が来春に創設する「統合作戦司令部」と豪軍司令部にそれぞれ連絡官を派遣し合う。同時に日本の反撃能力整備に向けた「協力の深化」も確認され、米軍横田基地(東京都)に置かれた日米共同情報分析組織(BIAC)に豪州が要員を参加させる。豪州は日本の「準同盟国」として、日米同盟を補強する重要性が増している。
中国は太平洋地域で広く現状変更を試みている。台湾への軍事的圧力を強める中で、東シナ海ではわが国の沖縄県尖閣諸島に対して領有権を主張。尖閣沖合の排他的経済水域(EEZ)に常駐させている海警局の公船がたびたび領海侵犯している。さらに先月26日には九州の近くまで軍用機を飛ばし長崎県男女群島上空を領空侵犯した。
この領空侵犯について声明で「深刻な懸念」を表明したことは意義のあることだ。当初の声明案に領空侵犯を踏まえた文言はなかったが、中国の軍事的脅威を豪州が看過することなく懸念を伝えたことは、一定の牽制(けんせい)力となろう。
また中国は、南太平洋ではソロモン諸島、キリバス、ナウルと国交を結び、台湾と断交させるなど豪州に近い島嶼(とうしょ)国へ影響力を拡大している。先月30日に閉幕した「太平洋諸島フォーラム(PIF)」に対しても、首脳声明のうち台湾との交流を再確認した部分について削除した声明文を公表させるなど不当な圧力を加えている。
このため日豪は声明で、太平洋島嶼国の通信インフラ整備などを支援する枠組みの創設を打ち出し、中国に対抗する姿勢を示した。このような事業に関して島嶼国では日本に対して大きな役割を期待している。太平洋沿岸で経済力ある民主主義国の関心の薄さが、中国の進出を招いている側面も否定できない。
わが国は新たに創設する「日豪太平洋デジタル開発イニシアチブ」で海底ケーブルの敷設やサイバーセキュリティー能力の構築などを支援することになるが、豪州と共に島嶼国に強い関心を示していることが現地に伝わることを願いたい。
多くの国が結束し対応を
南シナ海で中国は露骨に現状変更を押し通している。同海域のほぼ全てを囲む「九段線」を一方的に設定して領有権を主張しているが、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は九段線に歴史的根拠はないとして中国の主張を退けている。日豪は声明で、中国による東・南シナ海での現状変更の試みに「強い反対」を強調。国際法に従わない中国の行動は一段と強硬になっており、より多くの国々が結束して対応を強める必要がある。