【社説】アフガン撤退3年 テロ防止も重要な政策課題

米軍のアフガニスタン撤退から3年が経過した。撤退完了の直前に首都カブールの国際空港近くで大規模な自爆テロが発生し、米軍兵士13人を含む100人以上が死亡した。

米大統領選で議論再燃

2001年のきょう、米同時多発テロが発生。首謀者である国際テロ組織アルカイダの指導者ビンラディン容疑者をかくまっているとして、米国は軍事作戦によってアフガンのイスラム主義組織タリバン政権を崩壊させた。米軍がアフガンに駐留した期間は20年に及び、米国史上最長の戦争となった。

米軍撤退の際に混乱が生じた背景には、アフガン政府軍が米国の予想を上回る速さで崩壊したことがある。撤退完了前のタリバンによる首都制圧は、米情報機関も想定していなかった。バイデン政権の見通しが甘かったことは否定できない。

自爆テロを巡っては、過激派組織「イスラム国」(IS)系武装勢力が犯行を認めた。アフガンが再びテロの温床となる懸念が残る中、バイデン大統領が米軍撤退を強行したことにも強い批判の声が上がった。

米軍は撤退後もアフガンでの情報収集を続けてきたが、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘や、ロシアによるウクライナ侵攻への監視が優先され、情報は十分ではない。アフガン各地にはアルカイダの訓練拠点があり、アラブ諸国や中央アジア、ヨーロッパから危険人物も流入しているという。次期米大統領にとってはテロ防止も重要な政策課題となろう。

アフガン撤退から3年を迎える中、11月の大統領選に向け、バイデン氏の撤退判断の是非が改めて議論されている。民主党候補のハリス副大統領は撤退について声明で「バイデン氏は米国史上最も長い戦争を終わらせるため勇気ある正しい決断をした」と強調。これに対し、共和党候補のトランプ前大統領は「わが国の歴史上、最も恥ずべき瞬間だった」とSNSに投稿し、バイデン政権を批判した。

トランプ氏はアーリントン国立墓地を訪れ、死亡した米兵を追悼した。このことが同墓地の特定のエリアで政治活動を禁じる規則に抵触するとして論議を呼んでいる。ハリス氏は「政治的パフォーマンスのために神聖な場を冒涜した」と批判した。

一方、米兵の遺族はトランプ氏を擁護している。遺族の一人はハリス氏に「なぜあなたは自らお悔やみの言葉を述べないのか。まだ一度も聞いたことがない」と反発。バイデン政権が遺族に寄り添おうとしていないことが浮き彫りとなった。

武器使用緩和へ法整備を

米軍撤退に伴い、自衛隊もアフガンで邦人や大使館の現地スタッフの退避作戦を行ったが、自爆テロによる治安悪化などの影響で最大500人と想定していた退避希望者の多くはアフガン国内に残された。

この時、自衛隊は「安全」と認められる場合でなければ活動できない法的制約があった。22年4月に自衛隊法が改正され、この点は緩和されたが、武器使用などで制約は残る。これでは海外有事の際の邦人救出に支障を来しかねない。武器使用緩和に向け法整備を進めるべきだ。

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