立憲民主党の代表選が告示された。野田佳彦元首相、枝野幸男前代表、泉健太代表、吉田晴美衆院議員の4人が立候補し、23日の投開票まで論戦を繰り広げる。
4氏はいずれも、野党第1党として次期衆院選での政権交代を目指す姿勢を示した。今いる支持者だけでなくこれまで与党を支持してきた有権者に食い込むには、より明確で地に足の着いた国家観を示さなければならない。現実的で責任ある議論を期待したい。
所属議員も姿勢問われる
政権を担う上で最も重要なのは、国民の生命と財産を守ることだ。特に台湾有事などの危機が高まる今の国際情勢の中では、民主党政権時代よりさらに外交安全保障政策の重要性が増している。しかし、現時点では討論会などで外交安保政策が議題になること自体が少ない。
野党としての躍進ではなく与党としての信任を得ることを目標とするのであれば、自民・公明両党が進める現在の外交安保政策と、自らが掲げる政策は何が同じで何が違うのか、有権者へ判断材料をはっきり示すべきだ。今年は米国をはじめとする多くの国でリーダーや議員を選ぶ選挙が行われる「選挙イヤー」でもある。従来の路線を継承するだけでは対応できない事態が起こる可能性もあり、確固とした信念に基づく外交姿勢を持っておく必要がある。
野党共闘、とりわけ共産党との協力関係の是非も代表選の焦点の一つだ。前代表の枝野氏は2021年の衆院選で共産党との「限定的な閣外協力」を進め、両党の共闘関係は「立憲共産党」と批判された。結局、惨敗を招き枝野氏は辞任。後任の泉氏は就任後しばらくは共産との共闘を繰り返し否定していたが、昨年には次期衆院選で連携することで合意した。
しかし泉氏はその後、合意について「ミスリードなところがある」と主張するなどあいまいな態度を見せた。他の野党との連携については、候補者間で考え方の違いが浮き彫りになっているが、選挙が近づいた時、その姿勢を貫けるのかは未知数だ。これについては目先の票を取るか、党としての信念に基づいて戦うか、所属議員らの姿勢が問われる。
また党名に「立憲」を掲げる政党として、憲法改正に関する姿勢についても聞きたい。立民は憲法について積極的に議論、検討する「論憲」の立場を主張しているが、論憲を掲げ始めた後も、憲法審査会の開催に消極的な姿勢が目立った。議論した先に改憲の選択肢があるのかも含め、それぞれの考えを示してほしい。
出馬ルール緩和検討を
現行のルールでは、立民の代表選に出馬するには国会議員20人の推薦が必要だ。
国会議員数に200人以上の差がある自民と同じ基準で、今の立民ではハードルが高く、泉、吉田両氏は推薦人集めで苦戦した。緩和を訴える党内の有志からは、必要な推薦人の数を減らす案や、地方議員らも組み合わせる案などが提案されている。党内の意見を広く反映するためにも、緩和を前向きに検討すべきだ。