米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手が、またもや野球ファンを驚かせる快挙を成し遂げた。メジャー史上初のシーズン「43本塁打、43盗塁」の達成だ。パワーとスピードを兼ね備えた大谷選手だからこそ樹立できた記録だと言える。
「43本塁打、43盗塁」達成
大谷選手は8月30日のダイヤモンドバックス戦に1番指名打者で出場。二回に死球で出塁して二盗を決め、八回に左中間に本塁打を放って新記録を達成した。「43本塁打、43盗塁」は1998年にアレックス・ロドリゲス選手(当時マリナーズ)がマークした「42本塁打、46盗塁」を上回る記録だ。
大リーグの歴史で「40本塁打、40盗塁」を達成したのは、大谷選手を含め6人しかいない。メジャーの選手であっても、パワーとスピードを両立させることは至難の業だ。それを成し遂げてしまう大谷選手は、やはり異次元の存在である。このまま順調にいけば「50本塁打、50盗塁」も夢ではない。
これまで大谷選手は投打二刀流で大活躍してきた。160㌔を超える豪速球と豪快な本塁打は野球ファンを魅了し、数々の記録を打ち立てた。昨季まで所属していたエンゼルスではア・リーグ最優秀選手(MVP)に2度選ばれている。
しかし昨年9月に右肘を手術したため、ナ・リーグのドジャースに移籍した今季は打者に専念。それでも本塁打数はナ・リーグ1位で、2位に大差をつけて独走状態だ。盗塁も昨季の20個から大きく数字を伸ばしており、右肘のリハビリ中とは思えない成績を残している。
もっとも盗塁に関しては、決してやみくもに走っているわけではない。春季キャンプから走力アップのためのトレーニングに重点を置き、開幕後は相手投手のフォーム分析を怠らない。こうした努力と研究の積み重ねが、90%以上の盗塁成功率に結び付いている。
だが大谷選手には、個人記録以上の目標がある。「ワールドシリーズ(WS)で勝つのが一番の目標。自分の数字は、後からついてくればいい」。ポストシーズンでの戦いは、エンゼルスでは味わえなかったものだ。一方、WS制覇7回のドジャースはポストシーズンの常連で、今季もナ・リーグ西地区で首位を走っている。
本塁打、盗塁ともチームの勝利を引き寄せる上で欠かせないものだ。大谷選手は「両方できるに越したことはない」という。こうしたフォア・ザ・チームの精神が、新記録を生んだとも言えよう。ドジャースのロバーツ監督は「勝つためのチャンスを増やしてくれている」とたたえている。
WS制覇に向けて全力を
さまざまな記録を塗り替える大谷選手から勇気と希望をもらった人は多いだろう。8月には右肘の手術後初めて捕手を座らせてキャッチボールを行うなど、来季の投手復帰へも一歩ずつ前進している。
「打つ、走る」に「投げる」が加わった大谷選手が、どこまで進化するのか計り知れない。まずは今季のWS制覇と「50本塁打、50盗塁」の達成に向けて全力を尽くしてほしい。