【社説】辺野古移設 地盤改良を着実に進めよ

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、防衛省沖縄防衛局が軟弱地盤のある大浦湾側の区域で護岸造成に着手した。辺野古移設は普天間飛行場の危険性除去と抑止力維持のための唯一の選択肢だ。着実に地盤改良を進める必要がある。

大浦湾側で初の本格工事

辺野古の埋め立て工事は2017年に始まり、全体の4分の1に当たる南側は既に陸地化している。大浦湾側では初の本格的な工事だ。今後、軟弱地盤に約7万1000本の杭(くい)を打ち込んで地盤を改良する。埋め立てを経て、30年代半ばの移設完了と普天間返還を目指している。

移設を巡っては、玉城デニー知事が軟弱地盤発見に伴う設計変更の承認を拒んだため、斉藤鉄夫国土交通相が昨年12月、地方自治法に基づく「代執行」の形で変更を承認した。沖縄防衛局は今年6月、県との事前協議を打ち切り、8月以降に本格工事に着手すると県に通知。県は協議が調っていないとして中止を求めていた。

玉城氏は「辺野古に新基地は造らせない」と繰り返し訴えてきた。しかし玉城氏と共に辺野古移設反対を掲げる「オール沖縄」勢力は、6月の県議選で過半数を大きく割り込んだ。代執行を巡る訴訟でも敗訴し、移設を止めることはますます難しくなっている。

日本を取り巻く安全保障環境は、中国の強引な海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発などで厳しさを増している。日米同盟の強化が求められる中、辺野古移設に反対することは現実無視の極めて無責任な姿勢だと言わざるを得ない。

確かに、沖縄の基地負担は重い。ただ沖縄は、朝鮮半島や中国をにらむ要衝だ。中国の習近平国家主席は台湾統一に向け武力行使も辞さない構えを見せている。台湾と日本最西端の沖縄県・与那国島は約110㌔しか離れておらず、「台湾有事は日本有事」とも言われる。辺野古移設を含む抑止力の維持、向上が不可欠だ。

また、中国海警局の船舶が沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返している。中国は尖閣の領有権を一方的に主張するなど緊張が高まっている。玉城氏は知事として、日本の主権を脅かす事態が沖縄の島で生じていることをどのように考えているのか。尖閣の問題でも在沖米海兵隊の抑止効果は大きい。

普天間飛行場の危険性除去も急がれる。普天間は住宅密集地に位置するため「世界一危険な飛行場」とも言われる。04年8月には、近くの沖縄国際大構内に在日米軍のヘリコプターが墜落する事故が発生した。普天間が返還されれば、基地負担が軽減されるだけでなく、跡地を利用して新しい街づくりを進めることもできよう。

危険な妨害を放置するな

移設工事現場では今年6月、抗議活動中の70代女性と警備員の40代男性が作業中のダンプにひかれ、男性は死亡し、女性も右足の骨を折る重傷を負った。ダンプの通行を妨害する女性らを止めようとした警備員が事故に巻き込まれた。県は一日も早い移設実現のためにも危険な妨害を放置してはならない。

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