【社説】防災の日を前に 総合的な列島強靭化進めよ

あすは防災の日。関東大震災から101年となる。元日の能登半島地震、8月の日向灘を震源とした地震、それを受けての初の「南海トラフ地震臨時情報」発表と日本は地震国の課題に直面。豪雨の被害も増している。災害に強い国づくりをさらに進めるべきだ。

初の南海トラフ臨時情報

いつどこで地震が起きてもおかしくない日本だが、今後30年以内に発生の確率が70~80%と言われる南海トラフ地震への備えをより強化する必要がある。政府の被害想定では、死者は最大で約32万3000人。津波からの避難路や避難所の確保など詰めるべき課題は多い。救援活動や復旧・復興をできるだけ迅速に行うには何が必要かも改めて検討しなければならない。

能登半島地震では、長く伸びる半島の交通網が寸断され、復旧が大きく遅れた。南海トラフ地震で、関西圏を含む西日本につながる高速道路、鉄道が不通となり、津波の被害で港湾が使えなくなって人や物資の輸送が難しくなった場合、被害の想定地域には人口が多いだけに大きな混乱をもたらしかねない。

首都圏と関西を結ぶ大動脈の東海道新幹線が不通になった場合に備えて、東京-大阪間を1時間で結ぶリニア中央新幹線の開業を急ぐべきである。

災害に強い国づくり、列島強靭(きょうじん)化は、巨大な防潮堤を造るなどハード面の強化に重点が置かれがちだが、発災後の救援、復旧・復興を迅速化させ、二次災害を防ぐことが肝心だ。交通網、電力をはじめとしたエネルギー供給、通信の途絶を防ぐための対策など、ソフト、ハードの両面で総合的なバックアップ体制を日頃から備えておくことが求められる。

流通大手イオンと陸上自衛隊東部方面隊が、大規模災害時に被災者の救援や復旧活動で協力する連携強化協定を締結した。このような協力関係がさらに増えることを期待したい。

今は南海トラフに関心が集中しているが、首都直下地震も30年以内に70%の確率で起きると予測されている。首都直下の場合は、国の存亡にも関わる。政府機能や首都機能の分散移転も改めて検討すべきである。これらは東京一極集中からの脱却の起爆剤ともなり得る。

宮崎県日南市で震度6弱を観測した地震を受け、気象庁は、南海トラフ沿いで大規模地震が起きる可能性が「平常時と比べて相対的に高まっている」として、茨城から沖縄までの29都府県707市町村を対象に臨時情報を発表した。1週間後に終了したが、初の発表ということもあって国民の間では戸惑いが広がり、政府内でも過剰反応を招いたとの指摘もある。

日頃から命守る心構えを

実際、三重、和歌山、徳島などの県で宿泊のキャンセルや物資の買い占めなども起こった。徐行運転や一部運休に踏み切った鉄道会社もあった。臨時情報の発表の仕方や国民への説明を検証する必要がある。

自然災害に遭遇した場合、一人一人の防災意識の差が明暗を分けることは東日本大震災などの経験で明らかだ。日頃から自分たちの命は自分たちで守るという心構えを持ちたい。

spot_img
Google Translate »