Homeオピニオン社説【社説】アフリカ会議 安定と繁栄もたらす支援を

【社説】アフリカ会議 安定と繁栄もたらす支援を

日本とアフリカ諸国によるアフリカ開発会議(TICAD)閣僚会合が開かれ、2025年8月に横浜市で開く第9回首脳会合(TICAD9)への連携を強化するため、閣僚会合で初となる共同文書を採択した。

文書には国際法順守や法の支配を促進する重要性を盛り込んだ。こうした普遍的価値観の共有についてアフリカ諸国と合意した意義は大きい。

中露の影響力が増大

TICADはアフリカの開発をテーマに日本政府が主導する国際会議。1993年に始まり、現在は3年ごとに首脳会合を開催している。豊富な天然資源や増加する人口を背景に経済面で大きな潜在力を持つアフリカとの関係強化は、日本外交の重要なテーマの一つだ。

今回の閣僚会合にはアフリカ54カ国のうち41カ国から閣僚級が参加。「社会」「平和と安定」「経済」をテーマに議論が行われ、アフリカで活動するスタートアップ(新興企業)の支援に向けた環境整備の必要性などを共有した。

アフリカでは、強大な経済力によって中国が影響力を増している。中国外相の年初のアフリカ歴訪は、今年で34年連続となった。また冷戦時代に旧ソ連製の武器供与など軍事支援を受けたことから、ロシアと関係が深い国が多い。ロシアも2019年からロシア・アフリカ首脳会議を開催するなどアフリカ諸国の取り込みを図っている。

安倍晋三首相(当時)が「自由で開かれたインド太平洋」を提唱したのは、16年8月の第6回アフリカ開発会議(TICAD6)の場だった。安倍氏は、インド洋と太平洋に面したアジアとアフリカを結ぶ地域を「力や威圧と無縁で、自由と法の支配、市場経済を重んじる場として育てる」と強調した。

こうした日本の外交戦略を踏まえれば、巨大経済圏構想「一帯一路」で「債務のわな」が問題となっている中国や、ウクライナへの侵略を続けるロシアのような権威主義国が、アフリカへの進出を強めていることは望ましい状況だとは言えない。

日本は人材育成や透明性の高い開発金融などでアフリカを支えるべきだ。今回の会合では、安全保障分野での女性参画を促進するため、東アフリカ諸国が中心の地域機構「政府間開発機構(IGAD)」を拠点に、日本政府が「女性平和人材育成イニシアチブ」を創設することを打ち出した。

ただアフリカを含む新興・途上国「グローバルサウス」は、西側諸国の人権重視を「価値観の押し付け」と敬遠する傾向がある。会合の共同文書に盛り込まれた国際法順守や法の支配促進が、アフリカの安定と繁栄につながることを今後も粘り強く訴えていく必要がある。

国連改革で欠かせぬ存在

会合では、アフリカに対する歴史的不正義を解決するため、国連安全保障理事会改革が不可欠との認識で一致した。

日本はドイツ、インド、ブラジルと共に「G4」の枠組みで安保理改革と常任理事国入りを目指している。実現するには、アフリカ諸国の支持が欠かせない。この意味でも、アフリカとの関係強化は重要だ。

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